猫の血液型

 まず、何がほとんどの猫飼いが知らない内容なんだ、ということですが。

 ここで、質問です。


 あなたは、猫の血液型がいくつあるか、ご存じですか?


 もしかしたら、これを読んでくださっている方の中には獣医さんがいらっしゃるかもしれない。

 もしかしたら、過去に猫ちゃんの血液型を調べる必要があって知っている人がいるかもしれない。


 でも。


 例えば猫ちゃんがお家にいる人に、猫種は? 柄は? 性格は? と聞けば、すぐに返答があるかもしれませんが。

 猫ちゃんの、血液型は?

 そう聞いて、答えが返ってくるほうが稀でしょう。

 そう。それが、ほとんどの猫飼いが知らないことです。


 まず第一に、前提として知っておいていただきたいのですが。飼い主さんが猫ちゃんの血液型を知らないのは、普通のことです。

 なぜならば、普通の健康診断で血液型を調べることはしないから。

 もっと言ってしまえば、多くの猫ちゃんが調べる必要すらないから、です。


 どうしてなのか。


 答えは簡単です。

 猫の血液型は、圧倒的にA型が多いから。


 ちなみに、最初の質問。猫の血液型がいくつあるのか、ですが。

 答えは、三つです。


 A型、B型、AB型。

 この、たった三種類。

 人間よりも少ないんです。


 さてでは、どうして血液型の話をしているのか。

 そしてどうして、獣医さんですら重要視しないようなことを気にしているのか。



 それは、B型の猫が圧倒的に少ないから。



 そう。少ないんです。

 しかも、圧倒的に。

 比率にして、猫の80%はA型と言われているくらいですから。(※注:サイトや地域により、70~95%での変動はあります。)


 その理由は様々ですが、一番はA型の優位性でしょうか。

 猫には人間とは違って、O型は存在していないと言われています。

 なので存在しているのは「A型遺伝子」と「B型遺伝子」と「AB型遺伝子」の三つだけです。

 それなのに「A型親猫+B型親猫→A型子猫」ということが成り立ってしまうのです。


 少し、生物の授業みたいなお話になってしまいますが……。

 図で表すと、こんな感じ。



 A型=A/A,A/B

 B型=B/B


 A/A+B/B=A/B → A型のみ


 A/B+B/B=A/B or B/B → A型 or B型



 それぞれの親からもらえる血液型の遺伝子は、一つずつだけ。なので、この組み合わせになります。

 こう見ると猫のB型は、人間のO型に近いのかもしれません。

 他の血液型の遺伝子が混ざると、そちらに負けてしまうので。

 

 ちなみに、AB型に関してはほとんど稀だと言われています。

 それもそのはずで「AB型遺伝子+AB型遺伝子」もしくは「AB型遺伝子+B型遺伝子」のパターンでしか生まれない、本当に希少な血液型なのです。

 どちらかの親猫が希少なAB型でないと成り立たないので、世界的に見ても本当に少ない血液型なんだそうです。


 ただここで不思議なのが、猫の場合の血液型は「A>AB>B」という力関係で成り立っているところですかね。

 少ないはずなのに、B型よりも強いのがAB型。

 結局、Aが強すぎるということなのでしょうね。


 そして、そんなAB型よりもさらにパターンが少ないのが、B型。

 そう。B型猫が生まれてくるには「B型遺伝子+B型遺伝子」でしかあり得ないのです。

 ただしそこは人間の「A型=A/O」のように、猫には「A型=A/B」という形が存在します。上の図のように。

 なので実際には「A/B+B/B=A型orB型」が正確な表現かもしれません。それでも半分の確率で、A型が生まれてくるわけですが。


 ただし。

 母猫と子猫の血液型が違うと、母乳により血液中の赤血球が破壊されてしまい、激しい貧血を起こしてしまう場合があるそうです。

 もうこの辺りになってくると、結構専門的なことになってくるので。気になる方は調べてみてください。

 ちなみに「新生子同種溶血現象」と検索すれば、たくさん出てきますよ。


 で、そうなると。猫の繁殖を行うブリーダーさんたちは、それはもうちゃんと気にしているはずで。

 結果、何が起こるかというと。


 一番多いA型の猫で繁殖する人が、圧倒的に多くなる。


 言い換えれば、B型の猫が生まれてくる確率が低くなるということです。


 これ、一見いいことのように思ってしまいそうですが。

 実は、別の危険性も孕んでいるんです。


 当然ですが、ブリーダーさんのこの行為は全く悪いことではありません。むしろ生まれてくる子猫の安全を考えると、A型に絞りたいと考えるのは当然のこと。

 それ以前に、基本的に猫はA型で生まれてくることがほとんどです。

 だからそれ自体は悪いことではなく、むしろ自然であるからこそ、起きてしまう問題。


 圧倒的な比率差による、B型猫の輸血問題。


 長くなってしまったので、これに関しての詳しいことは、次の項目でお話しさせていただきます。


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