第4話 再会

ぼくの再会はいつも、最悪だった。だれかが、再会は結ばれぬ運命だった、と歌ってたけれど、ぼくの再会は、再会を期待しているわけじゃなく、ふと、出会えたら、いいなあ、って思ってるだけなのに、みすぼらしい格好の、みすぼらしい立場のときばっかりだった。そして、否応なしに、諦めざるを得なくなるパターン。

ユーミンが、ディスティニーという曲で、歌ってたのとは、また、違うような気がする。

『バカヤロー2』という映画を少年のときに見た。ラストで、さんざん、罵り合った者同士が、お茶をどうですか?と、結婚した住居に招待し、そのときは、照れ合いながら、仲良くしている。そこで、聞くのだ。何か聴きたい曲はないですか?と。

すると、奥さんのほうが、『ユーミンのdestiny』と答える。

すごく、仲良く終わるラストだから、ずっと、その曲を聴きたい、聴きたい!と憧れを抱いていた。

でも、聴かないままでいた。youtubeがなくって、レンタルショップで借りようともしなかった。

つまり、ただ、タイトルだけを聞いて、そのまま、大人になるまで記憶しておいたのだ。

大人の曲なんだろうから、と思ってた。少年のぼくが聴いてもきっと、わからないだろう、とすごく、高をくくってた。

そして、案の定、大人になったから、好きな子から、聞いたのだ。

「ユーミンのdestinyって、どんな曲?」


すると、その子は

「あれ、あんまりいい曲じゃないわよー。恋した、異性との再会で、サンダルをはいていて、みじめな思いをするって曲よ」

との情報。


そうだなあ、ぼくは、情報は鵜呑みにするほう。

そんな曲なら、聴かなくていっか!と幻滅。

しかし、それは、予想どおり!大人の曲だったってことだ。うぶな少年が、そんな曲を聴いてもわかるわけがない!

予想だけは、当たっていた。

大人になって、再会の厳しさを知ったぼくは、今朝聴いてみた。

うーん。運命って厳しいなあ、という感想。大人にならないと、厳しさには耐えられない。

ま、共感できたと言えば、共感できたんじゃない?

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