ヌルトラQ

カニカマもどき

緊急事態

 畝星にょろぼしドンには、三分以内にやらなければならないことがあった。


 "やらなければならないこと"とはもちろん、目の前の巨大怪獣を倒すことだ。

 そして三分というのは、彼が変身・巨大化して怪獣と戦える、限界の時間なのである。


 三分という時間を有効に使い、確実に怪獣を倒すためには、綿密なシミュレーションが肝心だ。

 故に、ドンは変身前に熟考する。


 やはり、必殺の光線を即座に放つのが、一番手っ取り早いか?

 いや。

 怪獣の特性も分からない今、そんな大胆な行動に出るのは危険だ。

 かわされて隙を突かれるかもしれない。

 もっと悪い場合、光線を跳ね返されたり、周囲を巻き込んで大爆発されたりするかもしれない。


 ならば、まずは肉弾戦を挑むか?

 いや、それも危ない。

 硬くて攻撃が通らないかもしれないし。

 触れると刺や毒、熱や冷気を出すタイプの怪獣かもしれない。

 その場合、ダメージを受けるのはこちらだ。


 まずは距離を保ち、小技で弱点を探りつつ、相手の出方を視るか。

 これを五十秒やった後、大丈夫そうであれば肉弾戦へ移行。キックやパンチから、徐々に組み合いなどの大胆な戦法に切り替えていく。肉弾戦に七十秒かけると、これまでの合計は百二十秒。すなわち二分。

 ここでカラータイマーが点滅を始める。ダメージが蓄積し情報も集まってきたであろうこのタイミングで、再び距離をとり、最適な狙い方や出力で必殺光線を放つ。これにかける時間は三十秒。

 残りの三十秒は予備だ。

 よし、いける。


 周囲を確認した後、ドンは素早く変身アイテムを取り出して、目に装着。

 光の巨人”ヌルトラマン”に変身する。

 同時に、武器"ヌルトラサスマタ"を呼び出し、両手で構える。

 目からは、いつでもミニ光線を放てるようにしておく。

「さあ、いざ勝負!」


 しかし。

「ギャオォォン!」

「ガルル……!」

「ギョギョーーッ!」

「キキキキ……」

 熟考している間に、なんか怪獣は三体ほど増えて、計四体になっていた。


「…………」

 ヌルトラマンは途方に暮れた。

 どうする、ヌルトラマン。

 どうする、畝星ドン。

 変身解除タイムリミットまで、残り二分四十九秒。

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ヌルトラQ カニカマもどき @wasabi014

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