第47(1)話★

 俺たちが飲み物とお菓子をもって部屋に戻ると、遼たちは何かを覗き込んでいた。冊子状になっており、中からはちらりと写真が覗いている。

「って、なんで人のアルバムを勝手に見てるんだよ……」

 俺は呆れながら、運んできた飲み物などを机に置く。

「いやー、ついそこの棚にこれがあったから気になっちゃって」

「あはは、桂くんごめんね……」

「そんなケチケチしないの。いいじゃん、減るもんじゃあるまいし」

 はあ、と俺はため息をつく。こうして、俺たちは勉強の休憩時間にアルバム鑑賞をすることになった。


「にしても、昂輝って中学のときからあんま変わんないのな~」

「あ、たしかに。それにお母さんに似ているわよね~」

「目元とかそっくりだよな」

 遼たちはアルバムを見ながらきゃいきゃいと騒いでいる。志藤さんも騒ぎはしないものの、真剣にアルバムの写真を見ていた。かなり興味があるようだ。


「ん、あれ?」

 しばらくして、遼が何か引っかかったのか声を上げる。

「どうかした?」

「なあ、昂輝、お前の写真ってこれで全部か?」

「俺の部屋にある分で全部だと思うけど?」

「いや、お前の写真、なんか途中の時期が極端に少ないんだよ」

「え? そんなわけ――――」

 俺は自分のアルバムをパラパラとめくった。

「……あれ?」

 自分のアルバムなんてそうそう見ることないから気が付くことなど今までなかったが、たしかに遼の言う通り、ある時期だけ他の時期と比べて写真の数が少なかった。

 もう一度、パラパラとめくり確かめる。しかし、やはりある時期だけ写真の数が少ない。

 その時期は、俺が五歳から七歳だった頃だ。もちろん、幼稚園の卒園式や小学校の入学式といった学校行事に関する写真は残っていた。

 しかし、他の時期にはあって、この時期にはない写真がある。

 それは、日常生活における写真だ。

 小さい頃であれば、家の中で遊ぶ様子を撮った写真やご飯を食べている様子を撮った写真が多くある。また、家族で旅行に行けばその時の写真が他の時期では残っていた。ただ、俺が五歳から七歳のときだけ、旅行の写真も家での様子を撮影した写真もただの一枚すら残っていない。

 言われてみれば妙だった。


 プルルル、プルルル……


 その時、誰かのスマホが鳴った。

「あ、わるい、もうそんな時間か」

 遼が鞄からスマホを取り出す。遼は帰る時間があまり遅くならないようにするため、アラームをかけていたそうだ。

「それじゃ、そろそろ帰りましょうか」

 七海が席を立つ。

「そ、そうだね……」

 続いて、牧原さんも帰り支度を始めた。今日の勉強会はこれでお開きのようだ。

 先ほどのアルバムの件は少し気になるが、深く考えても答えは出ない。これ以上考えるのは止めにしよう。

 この後、俺は玄関に出てみんなを見送った。

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