第17話★

 きゃはははは―――――――――

 うふふふふ――――――――――

 あはははは――――――――――


 その笑い声はまるで直接脳に語り掛けてくるようだった。

 さらには、志藤さんの周りに紫色の光が集まり始める。光はまるで生き物のように動き、その不気味な色も相まって、見る者に恐怖を与えてくる。

 さきほどまで茜色だった床は急速に闇の色に染められていった。

 それと同時に、彼女からは身の毛もよだつ大量の瘴気がこの場を覆いつくすかの如く溢れ出していた。


「ど、どうしたの……?」

「な、なんかやばくない?」

「き、気味が悪いんだけどっ」

 志藤さんを取り囲んでいた女子生徒たちも異変に気が付いたようだ。


 きゃはははは―――――――――

 うふふふふ――――――――――

 あはははは――――――――――


 笑い声がさらに大きくなった。声が頭にガンガン響いてくる。耳をふさごうがお構いなしだ。

 すっかり教室内は彼女の瘴気に満たされ、その場を一変させていた。それにとどまらず、そのどす黒い瘴気は、窓や扉の隙間から徐々に漏れ出ている。


 この奇怪な現象には覚えがあった。

 以前、母さんが使っていた魔導にとても似ている。しかし、母さんが使ったときは、こんなにも不快さは感じなかった。


「もしかして……」

 そこで俺は一つの可能性に思い至る。

 おそらく今の志藤さんはこの魔導を制御できていない。パニック状態に陥っているからか、完全に魔導を暴走させていた。


 これ以上騒ぎが大きくなる前に早くどうにかしないと……


「きゃーッ」

 ついに、女子生徒の一人が悲鳴をあげた。

「なぎさっ⁈」

「あんた、一体なにをっ」

 女子生徒は、志藤さんに睨みをきかせる。


「……やめて、……近づかないで。……お願い」

 しかし、志藤さんの耳には女子生徒の声が聞こえていないようだ。彼女はひたすらに肩を震わせて、その場に座り込んでいる。


 そして――――、


 ばあっ

 ひゃあっ

 あーー


 この世には存在しないはずの幽霊たちが教室内に現出した。

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