彼女がセンターに立つ理由
uruu
プロローグ:センター決定
(プロローグは読み飛ばしても大丈夫です)
「うーん…」
KIP劇場支配人・渡辺一郎は悩んでいた。
JIPグループは全国各地に専用劇場を構えている。最初に誕生した東京のTIPから始まり、大阪、名古屋、札幌、広島とグループは増えていった。そして九州初のグループとして熊本に劇場が完成した。なぜ熊本なのかというと現在のJIPグループ統括プロデューサーである
渡辺は高森プロデューサーの部下として数年間働いた後、その実績が認められ、KIPの劇場支配人に選ばれた。最終オーディションを経て決まった12人のメンバーはこれまで基礎レッスンに明け暮れていた。明日からは公演の本格的レッスンが始まる。ということは、ポジションを決めなくてはならない。そこで最初に決めなくてはならないのはセンターだ。
センターはグループの顔となる。誰をセンターにするのか。劇場公演については支配人に一任されていた。
だが、KIPのメンバーには個性的な子が多く、悩ましい。例えば
だとすると
そう考えていくと、どうしても候補は1人だけになってしまう。
だが、このような素人同然の子をセンターに置いていいのだろうか。
悩んだ渡辺はベテランの音響監督である鈴木に意見を聞いてみた。
「鈴木、お前なら誰をセンターにする?」
「センターですか。そうですね…自分には判断が付きかねますが、あえて挙げるなら糸島ルカですかね」
「糸島か。なぜだ?」
「理由を言うのは難しいですね。ダンスも下手ですし。でも、自分の仕事で言うと、声が抜群にいいですね」
「そうか。意見ありがとう」
渡辺は他のスタッフにも意見を聞いてみた。次はマネージャの川崎だ。
「センター……難しいで質問ですね。うーん、自分なら糸島ですかね」
「その理由は?」
「自分は移動中や楽屋でのメンバーを良く見ていますが、結局彼女が中心だなというのを感じてますので」
「そうなのか? 露木アンとかが移動中はうるさそうだが」
「騒いでるのは露木ですけど、それをうるさいとたしなめるのは糸島です。露木もいつもルカに絡もうとしてきます。結局、話題の中心には糸島がいる感じがします」
「なるほどな」
他のスタッフ全員に意見を聞いてみた。ところが、他の全員も悩みながらも結局、糸島ルカを挙げた。
満場一致だった。
ということは彼女には人を引きつける魅力があるのだろう。
正直、スキルという面では糸島ルカはどれも物足りないが、努力して伸ばしてきているのは確かだ。
高森プロデューサーには怒られるかもしれないが、ここは賭けてみるしかないか。
渡辺はついに決断した。こうして、KIP劇場公演のセンターは糸島ルカに決定した。
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