第3話 祈り(菜の花)

黄色い菜の花よ

月夜の裾に在ってくれ

暗い夜の底で

眠れない私のために


黄色い菜の花よ

長閑な野辺の花で在ってくれ

ただ紋白蝶や黄蝶や

海のそこに眠る小さな貝の名を

冠した蝶のために


黄色い菜の花よ

人々は忘れている

ほろ苦い春の味覚であり

種は圧して搾れば油となる

尊い花であることを


人々よ忘れていてほしい

その黄色い花を

人々が争って摘むその日が

来ないことを祈る






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アオイロノペン @blue-ink-pen

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