ゲーミング系メスガキ

「おかえり~」

仕事から帰ってきてまず最初に見えたのは、謎の少女だった。

ツインテールに、タンクトップ。少なくとも私の知り合いにこんな子はいない。


「えっと……誰ですか?」

「お姉さんが使ってるパソコンだよぉ~、忘れたの?」

パソ、コン?

「え、は?!」

「記憶力皆無www」

うん。いったん状況を整理しよう。

私は仕事から帰ってきた、家には、自分のパソコンを自称して煽ってくる子。

――――は?


「考えれば考えるほどわけわからなくなった……」

「え~これくらいで?メモリすっくなwww」

なんなんだよこの子。

「と、というか自分がパソコンって言うなら証拠出しなさいよ!証拠!」

私は声を荒げる。すると、彼女は手を差し出した。


「え?」

「これがしょ~こ」


すると、彼女の手が七色に光りだす。

「うぎゃ!?」

「ど~お?これで私がパソコンってわかってくれた?」

――――私は脳をフル回転させる。

そういえば、この発色はどこかで見たことがある。

どこかで、というか――――私がパソコンを使ってるときに。

「ほ、本当に、パソコン?」

「やっとわかったのwwwざこ理解力www」

なんじゃこいつ。

「これは夢……これは夢……」

そう呟きながら、私は水を一杯飲んだ。


◇◇◇


ピリリ、ピリリという音が鳴る。

「――――あ!」

今日は『あれ』の日だった。

「ん~?どこいくの?」

「ショッピングモール!」

「私も行く!」

――――は?

「おねーさんみたいな雑魚、私がいなきゃなにも出来ないと思うしwww」

もう殴っていいかな。

「つ、ついていくなら準備して!」

「おっけ~」

私は勢い良く玄関を飛び出した。


◇◇◇


「ふ~……よかった、ちゃんと手に入って」

私の手には、ゲームのパッケージが握られていた。

「なにそれ?」

「コンシューマーゲーム。今日特売なの」

この店はたま~にゲームをとんでもない安価で売っているんだ。

しかも、最新のを。

私はルンルン気分で道を歩く。

さぁ、今日は遊ぶぞ!


「ざこ脚力www」

横断歩道の向こうから煽ってくる彼女をしばきたい欲をこらえ、私は青信号を待った。

というかなんかスマホからあの子の声が聞こえてくるし、なんなの?

パソコンだからそういうことができるの?

そう思いつつ、私は信号を待つ。

ここ、車の速度が速くて怖いんだよなぁ。

そんなことを考えていた時だった。


「え?」


仕事終わりで疲れていたのか。私は――――バランスを崩した。

「嘘……」

車が突っ込んでくる。

まずい、このままじゃ――――。


「マスター!」


次の瞬間、私の目には――――スライディングする彼女が映っていた。

「え?!」

驚いている間に、彼女は私との距離を詰める。

そして、彼女は――――私を窮地から救い出した。


「だ、大丈夫?!」

冷や汗を流した彼女が私に尋ねる。

「だ、大丈夫」

「よ……よかった~」

彼女は表情を緩ませ、私に抱きついた。

「な、なんで私を助けられたの?」

彼女は微笑む。

「当たり前じゃない。ずっとあなたのプレイを見てきたのよ!」

――――そういえば、彼女のスライディングはFPSゲームのそれとよく似ていた。

「あ、ありがとう」

「……マスター、これからも、私と一緒にゲームしてくれる?」

彼女の質問に、私は困惑しながら答えた。

「も、もちろん」

彼女は静かにはにかんだ。

「今日からもよろしくね!マスター!」

彼女の体は、ほんのり暖かかった。

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