マイコンピュータ なんか擬人化してた子たち

浅倉有人

マイニング系ロリ

「うぅ……眠い……」

俺――――華窓 円太は長い眠りから覚めた。

時刻は午前11時。

……もうちょっと寝るか。


「早く起きなさーい!!!」


「うわぁ?!」

後ろから聞こえてきたのは、まるで子供を起こす母親のような言葉。

そして――――うちにいるはずがない、少女の声だった。


◇◇◇


「えっと、君は誰だい?」

丈の長いズボン、青色のシャツ。

謎の少女は物おじせずに答えた。

「あなたが使ってるパソコンですよ!わからないんですか?」

「……頭大丈夫?」

その瞬間、彼女は目を見開いた。

あ、これ失礼なこと言ったやつだ。

「私は第十世代のCPUを搭載してるんですよ!自分で買ったPCなのに、忘れたんですか?」

「え?」

そう言えば、パソコンを買った通販サイトにそんなこと書いてたような……。

「そんなに怪しむなら、見せてあげましょうか?」

「な、何を?」

彼女は、履いていたズボンをたくし上げた。

「え、ちょ?!」

俺の目に飛び込んできたのは少女の生足――――ではなく、銀色のパネルだった。

「は?」

「USBとか有線LANを刺すところよ。見たことないですか?」

「み、見たことはあるけど」

――――これ、夢だよな?

そう思った瞬間、彼女は器用に手を動かし、俺の頬をつねった。

「痛った!?」

「夢じゃないでしょ?」

……心読まれたぁ?

「私とどれだけの付き合いだと思ってんですか?」

「あなた一日何時間もパソコン見てるんだから、あなたが考えてることなんて丸わかりですよ」

わ、わけがわからない。

なんなんだよ、これ。


「あ、ちょっと外出してきますね!」

「ちょ、ちょっと!逃げる気ですか!?」

そのまま、俺は逃げるように部屋を出た。


とりあえず、あの子は幻覚か何かだ。

そう思いながら、俺は行きつけのカフェに行った。


◇◇◇


「うぉぉぉぉぉ!!!」

「うわぁ!?」

部屋に入った瞬間、彼女はバトル漫画のような雄叫びをあげていた。

「おぉぉぉぉ!」

「ど、どうしたんですか?」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

その瞬間、彼女は動きを止めた。

「マ、マイニングです、仮想通貨の」

マイニング。仮想通貨というシステムを成立させるための作業だ。

でも、なんでそんなことをしてるんだ?

「いつもこの時間にマイニングするように設定してるでしょ?」

「え、そ、そうだけど」

まさか、この子本当に?


「まぁ、とりあ」


そこまで言った途端、彼女は崩れ落ちた。


「うわぁ!?」

俺は手に持っていたペットボトルを取り落とした。

「と、とりあえず、どうしよう?!」

俺は彼女のおでこに触れる。

――――まるで、カイロのように熱かった。

「まじかよ?!」

ひとまず冷却シートを持ち出し、彼女のおでこに貼る。

ソファーに彼女を寝かせ、布団を被せる。

俺はその場に座り込み、彼女を見守った。


◇◇◇


私――――コンピューターは、なぜか今日人間の姿になった。

意識が深い海に沈んでいく中、私は昔のことを思い出していた。


『国、言語を選択してください』


それが私が話した、初めての言葉だった。

それ以来、私と彼はエキサイティングな生活を送ってきた。

ハードディスクがぶっ壊れた時は焦ったな。もう私は助からないと思ったし。

――――だけど、あの人は見捨てなかった。

意外とハードディスクの修理費用ってかさむんだよ?

あの時は、ちょっと嬉しかったな――――。


◇◇◇


「ん、あぁ」

「大丈夫か?」

俺は彼女に声を掛ける。

「ちょっと負荷がかかりすぎたみたいで」

「すごい熱だったから焦ったよ」

その瞬間、彼女は首を傾げた。

「CPUの温度って、40度とか50度が普通ですよ?」

「え、はぁ?」

その直後、彼女ははにかんだ。

「おいおいおいおい……」

彼女につられ、俺も笑ってしまう。

「けど、嬉しいです。あなたがそんなに心配してくれて」

「お、おぉ」

俺は軽く相槌をうった。


彼女はおでこのシートをはずす。

「ありがとうね。華窓さん」

――――え?

「それとも、あなたって呼び続けるほうがいいですか?」

「い、いえいえ!」

俺がそういった瞬間、彼女はまたしても笑い始めた。

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