転生課の未来さん
熊肉の時雨煮
第1話 いらっしゃいませ
身長は152センチと少し低め、体は細身で髪は茶色の緩くウェーブのかかったロング、鳥のような真っ白な羽と光の輪を携えた彼女は天界のお偉い神様の部下の天使で、普段から魂を新しい生に導く転生課で仕事をしている。同僚の中でも頭ひとつ分成績が良くそれなりの給料も出ており、順風満帆とは言わずともそこそこいい暮らしをしていた。
この日も、魂を新しい生へと導き、家に帰ってからは溜まっていた地球のドラマの一気見をし、明日に備えて眠りにつく。そうなるはずだったのだが……
「おい!手が止まってるぞ!さっさとしろ!」
「は、はい! ただいま!!」
なぜ、こんなことになってしまったのだろうか?
全てはほんの十分前に遡る。
**
「ありがとうお姉さんたち!バイバーイ!」
「はーい、またねー」
未来はつい先ほどまで同僚が対応をしていた子供のお客様を手を振って見送る。
「暇ですねぇ、せんぱぁい」
「お客様が去った途端その態度はどうかと思いますよ?」
転生受付カウンターで事務作業をする未来のすぐ隣で、同僚の
「暇ということは今日は死者が少ないということです。いいことではありませんか」
叶の言葉に未来は手元の書類に目を向けたままそう答える。転生受付カウンターでの仕事は死者の次の生を斡旋すること。来客が少ないということは死者そのものが少ないというのと同義だ。
「でもぉ、こんなんで給料もらってていいんですかねぇ? あたし、ちょっと心が痛むんですけどぉ」
私の言葉を聞いた叶がそう口にする。
「あなた、意外と真面目ですよね。普段はそんなやる気のなさそうな態度なのに」
「あたし、やる時はやる女なのでぇ」
未来の指摘に叶はニヤリと笑ってそう答える。
「では、この書類の整理を手伝ってもらえますか?少し量が多くて――」
「あ、そうだ。あたし頼まれてた仕事があるんでした」
未来は『忙しい忙しい』と呟きながらその場を離れる叶の背中をジト目を向けながら見送った。小言の1つでもぶつけてやろうかとも思ったが、どうせ無駄だと悟り再び書類へ視線を戻す。
「ですが、彼女の言う通り、今日はやけに来客が少ないですね。もしかしたら今日は少し早く帰れるかも。そしたら何しましょうか? 溜まってたドラマを見ましょうか?それともお買い物?うーん、どれもなんだか……」
と、家に帰ってからのことを想像していた未来の耳へ、カランカランというドアベルの音が届く。入り口の方を確認すると、フードを被った女性がこちらに歩いてくるところだった。身長はおそらく160センチほど、顔はフードで隠れて見えないが、胸元の膨らみから女性だと推測できる。よく見るとフードの下にはYシャツとスカートのようなものが見え、高校生のようにも見える。
「いらっしゃいませ、どのような生をお探しでしょうか?今でしたらこちらのプランなど――」
「おい」
新しいお客様へ未来はいつもの営業スマイルとテンプレートのあいさつを投げかけ、流れるままにおすすめのプランを紹介しようとし、それを遮られる。
「……なんでしょうか?」
「動くな」
「……へ?」
それに少し動揺しながらも、笑顔を崩さず対応しようとする未来の首元へ、何やらひんやりとした感触のものが当てられる。
「動いたら殺す、いいな?」
そう問われた未来は声には出さず、こくんと頷き肯定する。
「よし、なら今から私の言う通りにしろ」
未来の意思を確認した彼女は自身の要求を突きつける。
「この体、この記憶を保ったまま、三分以内に私を元の場所へ生き返らせろ!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
みなさんお久しぶりです。熊肉の時雨煮です。
電撃大賞がどうのこうのと言ってから全然投稿していませんでしたが私はめっちゃくちゃプロット作りに悩んでました。
なかなか進まずどうしようか思っていた矢先、KACというものが始まったので気分転換にやってみることにしました。
電撃大賞は……まぁ頑張ります。
短い間ですが定期的に投稿するのでよければお楽しみください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます