KAC2024の皆勤賞をとるためには三分以内にやらなければならないことがあっ

エテンジオール

第1話

 KAC2024の皆勤賞をとるためには三分以内にやらなければならないことがあった。誤字脱字の修正とタイトルを考えることである。


 なぜ、3分以内なのかと言う疑念は当然上がるだろう。一言で答えれば期限が迫っており、まだ完成していないからである。正確には、どうせすぐできるだろうと油断して、完成を後回しにしてきてからだ。


 後回しは物書きの常であり、直前に必死になるのもまた同様である。そんな古き良き慣例に習い期限当日に書き上げ、残すは投稿するのみ。そこで問題となるのが、見直しとタイトルの設定である。余裕だ。このくらい、灰色の脳細胞をフル活用すればちょちょいのちょいさ。そうやって調子に乗り、すぐに自らを省みる。


 お前はいつもそうだ。ギリギリセーフという負の成功体験ばかり重ねてきたせいで、時間を守るなんて基本的なことすらできなくなった。この結果は、お前の人生そのものだ。誰もお前を愛さない。


 けれど、たとえ誰にも愛されずとも、一度決めたことはやり遂げたい。そんな一心で更生を初めて、すぐに3箇所ほど誤字を見つけた。直ちに修正しようとして気がついたのは、人が一分で読める文章量が約400文字であること。


 時間がなかった。あと一分でタイトルを決め、投稿ボタンを押さなきゃいけない。多少のラグを加味すれば、少なくとも紀元の十秒前には投稿したい。


 誤字を減らし、脱字を正すのがそんなに高尚か。刺す。夏目漱石の中の人間失格に励まされ、修正することをあきらめる。


 タイトルは適当でいいだろう。30秒で思いついたものをつけて、タグだけは間違えないようにしっかりつける。最後に確認だけ済ませれば、レギュレーションを満たすためだけの小説は完成した。


 秒針が10を刺す。あとは投稿ボタンを押すだけ。今回も何とかなって、一つ成功体験が増える。高鳴る鼓動に喜びを覚え、タイトルを見た事でそれが止まる。


 無慈悲な秒針が12を指す。成功体験は失われた。

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KAC2024の皆勤賞をとるためには三分以内にやらなければならないことがあっ エテンジオール @jun61500002

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