サバイバーズ・ギルト

八重樫 月夜

―第1章― 反転世界

第1話 始まりの世界

デスゲーム――開幕――

ここは神の摂理さえ捻じ曲げた失楽の世界。


自然の音や社会の音すら感じない、もはや耳鳴すら感じさせる虚無の世界に、1人の少年が安らかに眠っていた。


やがて少年の体の脈が鼓動し始め、重く閉じていた筈の瞼がゆっくりと開かれる。


「地球……ここは?」


少年の目の前には青々と煌めく地球が幾つも存在していた。


まるで月の地上から地球を見上げるようにして……


「ハァ――」


少年は暫く地球を眺めると、何か理解したかのように、まるで死に行く人が見せる、最後の笑顔のような表情へと変わっていた。


すると背後から音もなく少年に近づく影が現れた。


それは地球の光に照らされ、人間のような見た目をした獣人の少女が、少年を背後から優しく抱きつく。


少年は呟く。




「俺達……"死んだんだな"」


「……うん」


「皆を守れたんだよな?」


「うん、誰かの為に自分を犠牲にする……これも人間らしくていい」


「フッ……そっか」




まだまだあの星は平和とは程遠い、だけどいつかは、誰もが笑顔で暮らせるような世界にさえ、なってくれれば――


2人の束の間の命が、徐々に光の泡となって霧散していく。


もう自我すら保つのが辛く感じてきた。




「少しぐらい休みたかった、もう少しマスターと地球を見ていたかったのに」


「ゲームオーバーかもな」


「まさか、"ここまでだなんてな"マスター


「ゲームってのは、まさかまさかの積み重ねなんだよ」




最初は命を賭けた"デスゲーム"だと思っていた。


まさか、こんなことになるなんて。


そう、俺達の手に世界の命運がかかっていたんだ。


全ては、あの瞬間から始まっていた。


あの日、この若き獅子の少女に出会ってから――

――――――――――――――――――――

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