ダンジョンRTA~02:28~
常闇の霊夜
初心者ダンジョン五階層ボス撃破RTA
リタには三分以内にやらなければならないことがあった。
それはダンジョン攻略RTAを極める事だ。
巷で噂のダンジョン。現代社会に出来てからは挑む者が多くなり、当然そうなって来ると最速撃破RTAが始まる。
ランダムで決まる階層、運に左右される階段探し、もはやストレス解消にもならんボス戦。
リタが挑む前でも三分切りを目指した者はいた。
だが口をそろえて『三分切りとか不可能』『いやバグでも無けりゃ無理でしょ……』と、言われ続けていた。
しかしリタにはできると言う確信があった。
今回挑むのは初心者ダンジョン、難しい敵はいないがシンプルに五階ある為、通常攻略の場合階段を探して下に降りて……と言う面倒な手順を踏む必要がある。
しかし、ある日彼はとんでもないバグを発見した。
『フィギアスケートの靴を履いて、どこでもいいからトリプルアクセルを決めると床を抜ける』
……と言う物だ。
もちろんトリプルアクセルと言うのはフィギアスケートの中でも高難易度の技、それをボスまで行くなら四階ノーミスでクリアする必要がある。
その上ボスで二分くらいかかるため、実質一分以内でクリアしなければできない。
激ムズ攻略この上ないRTA。これまで挑んで五十回以上床に突き刺さったり、リスポーンしたりと繰り返してきた。しかもその間中ボス用武器を失い何度も何度もくじけそうになった。
だが、それでも。必ず成功する訳でも無いが、行けると思ったからやるのだ。
「行くぜ!」
リタがダンジョンに足を踏み入れた瞬間からタイマーは進む。つまり入る前にトリプルアクセルを決めれば実質ノーリスクで挑めると言う事だ。
何度もミスっているのだ、このくらい多めに見て欲しい物。
「一!」
もう一回目は慣れた物である。
二階層に足を踏み入れ近くにモンスターも宝箱も無いのを確認するとすぐさま二回目のトリプルアクセルに挑む。
「うおっ!?」
だがここでトラブルが発生した。
回転が足りなかったのか床を抜けなかったのだ。
だが慌てない。すぐさまリカバリーをする為勢いをつける。周りを確認したのはリカバリー出来る隙間があるか銅貨の確認である。
「っぶねぇ!」
何とかトリアクを決め下層へ、三階は水が多いが運よく陸地にたどり着いたのでその場で成功させ四階へ。四階も当然トリアク……ではなく、近くに階段があるのを発見し靴を履き替え階段を降り四階層へ向かう。
「さぁボス戦だ!」
初心者ダンジョンのボスはデカいゴーレムだ。その大きさ五メートル強。
一見するとデカすぎんだろ……と思うだろうが実際それほど強くはない。
ここまででなんと四十秒でたどり着いた。
「最速狙うなら攻めルート一択!」
このゴーレムには二分確実にかかるが安定するルートと、約一分半で倒せる攻めルートの二種類がある。
安定ルートはほぼ確実で倒せるが、今回は記録狙い、当然攻めルートである。
「ナイフはある……!」
リタはナイフを装備すると、ゴーレムの右足に近寄りゴーレムの足をひたすらに突く。
するとゴーレムはリタに向け攻撃を仕掛けてくる……。
これを狙うのだ。ゴーレムの急所は首の後ろ、ここを攻撃すればほぼ一撃である。
しかしゴーレムはデカい。まともに上ってもその前に迎撃されるだろう。
故に腕を登る。攻撃してきた大振りのパンチを避けるとそのまま腕を駆けあがり首めがけ走る。
「よッし最速ッ!」
リタがゴーレムの首にナイフを突き立てた瞬間、ゴーレムは音を立てて崩れ落ちた。
だがまだ安心は出来ない。先ほど二分もかかると言った理由が次である。
「さぁ……最終ラウンドだ!」
何を隠そうコイツ、第二形態持ちなのである。
コレが嫌われている理由。一撃で倒さないと復活する演出が入り滅茶苦茶ロスになるのだが、今回はそれを完璧にこなしたので演出無し。
「首を断つ首を断つ……!」
第二形態は首を切れば勝利。動かれる前に殺すのが一番早い。
空中でナイフから刀に持ち変えると、落ちる勢いでそのまま首を断ちに行く。
「コレで……終わりだっ!」
刀はゴーレムの首を貫きそのまま断ち切った。
クリアタイムは02:28。
世界記録である。
「はぁ……っ!」
歓喜の声を上げ一人お祭り騒ぎなリタ。
果たして次に挑むダンジョンは……?
ダンジョンRTA~02:28~ 常闇の霊夜 @kakinatireiya
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