三分以内に卵を落とせ!【KAC20241】

イノナかノかワズ

三分以内に卵を落とせ!

 カッコウの俺には三分以内にやらなければならないことがあった。


 そう、卵落としだ。


 つい先ほど卵から孵った俺は、ほとんど見えない目で巣を見渡した。


 ご飯自動運びマシーン親鳥(笑)はおらず、俺よりも一回りも小さな卵が四つ巣の中にあることが、なんとなくだが分かった。


 そしてその卵は俺とは血の繋がっていない、種族すら違う鳥の卵だ。ご飯自動運びマシーン親鳥(笑)の卵である。


 俺は知っている。本能的に理解している。


 この卵を落とさなければならない。でないと、ご飯自動運びマシーン親鳥(笑)から得られるご飯が減って餓死してしまう。


 そして、また、ご飯自動運びマシーン親鳥(笑)の卵が孵りそうになっていることが分かる。


 普通ならば、数日ほど余裕をもって卵落としができるのだが、俺をこの巣に托卵した育児放棄ババアクソ親鳥が呑気だったせいで、ギリギリのタイミングに俺を托卵したのだ。


 そのせいで、俺が孵るタイミングもギリギリになってしまった。


 ……タイムリミットは三分か。


 卵から孵ったばかりで、力も入らない、視界もはっきりしない。だが、それでも俺は生き残るために卵落としを始めた。


 生まれたばかりの俺の体には羽毛が生えていない。骨と皮だけの存在だ。


 だけど、俺の背中は特別製だ。小さな小さな翼を広げた部分に、窪みがあるのだ。ちょうど、ご飯自動運びマシーン親鳥(笑)の卵が入るくらいの窪みが。


 俺はうんとこしょ、どっこいしょと一つ目の卵の下に自分の体を滑り込ませる。お尻でゆっくりと卵を持ち上げて背中に転がすのだ。


 そして背中の窪みに卵が嵌ったことを確認したら、次は巣の外側に向かって万歳をする。


「キュイエーー!」


 すれば、卵が巣から落ちた。グチャンッと割れた音が聞こえた。


 ……よし。ピーピーと鳴く声も聞こえない。自由落下のエネルギーによって卵と共に中の雛も死んだな。


 あと三個!

 

 孵ったばかりの俺には重労働だけれども、頑張るぞ!


「キュイエーー!」


 二個目も落とした!


「キュイエーー!」


 三個目も落とした!


 そして四個目を落とそうとした時。


 ピシリ。


 ご飯自動運びマシーン親鳥(笑)の卵にひびが入った。


 マズイマズイマズイ! このままでは孵ってしまう! 俺の飯が少なくなって餓死してしまう!!


 やらねばやらねば! 動け俺の体!!


 うんとこしょっ! どっこいしょっ!


「ピ――」


 そして雛が僅かに顔を出すその一瞬前に。


「キュイエーー!!」


 卵を落とした。


 グチャンッ……………………


 ひなの鳴き声は聞こえない。自由落下と共に死んだのだ!!


「キュイエーーッッ!!!」


 勝ったぞ! 勝った! 俺の勝ちだ!


 これでご飯自動運びマシーン親鳥(笑)から貰えるご飯をすべて独り占めできる! 大人になれるぞ!!


 羽毛も生えていない翼を広げ、俺は力強く産声を上げた。




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また、新作『ドワーフの魔術師』を投稿しています。

ドワーフの魔術師がエルフの女戦士と一緒に世界を旅するお話です。ぜひ、読んでいってください。よろしくお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/16818023213839297177

 

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