プレイリスト

クロノヒョウ

第1話



 俺には三分以内にやらなければならないことがあった。


 頭の中のプレイリストから三分以内の曲を探し出す。


 スタートしたのはビートルズの「In My Life」だった。


 ジョン・レノンが故郷の思い出をつづった歌詞だとか人生について書いた曲だとか言われているが、俺は愛する人へのラブソングだと思っている。


「もう電車きちゃうね」


「ん、ああ」


 ホームで俺を見上げた真央と目が合った。


 終電まであとわずか。


 真央ともっと一緒にいたい。


「今日も楽しかったね。安藤くん、いつも誘ってくれてありがとうね」


 真央の笑顔に胸が高鳴り頭の中の「In My Life」がボリュームを上げた。


 大学に入ってから真央のことは何度か見かけたことがあった。


 いつも友だちに囲まれ笑っている真央。


 その笑顔が見たくて気付けば真央を探しては目で追っている自分がいた。


 三年生になって真央と同じ講義を選択して少しずつ真央に近付いた。


 今は仲良しグループのひとりだ。


 今日はたまたま帰りに二人きりになれた。


「それにホームまで送ってくれてありがとう」


 真央はきっと俺の気持ちに気付いているだろうし、真央も少しは俺のことを意識してくれていると思う。


「真央」


「ん?」


 最終電車がくるとのアナウンスが流れた。


 俺は右手を真央の前に突き出した。


「俺、真央のこと好きだよ。だからこのまま帰したくない。もっと真央と一緒にいたいって思ってる」


「安藤くん……」


 電車が駅に到着してたくさんの人がホームに流れ込んでくる。


「もしも真央も同じ気持ちなら俺の手を握って」


 ざわめきの中、俺は叫ぶように言った。


「なんならこの先の人生もずっと真央といたい」


 頭の中の「In My Life」の歌詞と口から出てくる言葉がリンクする。


 真央は驚いたような恥ずかしそうな顔をしながら静かに俺の手を掴んだ。


 俺はその手を離さないように強く握りしめた。


 プレイリストの「In My Life」が終わると同時に最終電車が発車するベルが鳴り響いた。






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