日常風景
砂葉(saha/sunaba)
未来の見えるもの
この優秀な俺には三分以内にしなければならないことがあった。それをしなければ、俺は首が折れて死んでしまう。
俺は生まれつき未来が見えた。未来が見える時、俺は毎回、命が危険に晒されていた…。
まず一番初めに見えた未来はこれだ。
『俺の周りから仲間が全員消え去り、最後に残った俺は相手組織に捕まり、体を拘束されて首を折られてしまう。』
初めはこんな馬鹿らしいことが起きるとは思っていなかった。
だが、総勢約五十の仲間たちは組織にどんどん捕まっていき、あるものは首を折られ、あるものは足だけを残し、巨大なヤスリのようなものでミンチにされてしまった。
俺はそんな未来を逃れるため、仲の良い、他のグループに移った。移った次の日、俺の入っていたチームは崩壊し、誰も残ってはいなかった。
二番目に見た未来は、巨大ヤスリでミンチにされ、ミンチになった俺に身体が、蛸足のような器官を持った巨大な化け物に喰われてしまうという未来だ。
これも始めは仲間が犠牲になった。ザリザリ言いながらミンチにされていく仲間、地震のような振動を生みながら一瞬で目の前を通り過ぎていく化け物を見ながら、俺は仲間たちとアジトの中で縮こまって震えていた。
俺はまたアジトから逃げたが、仲間たちは今さらアジトを捨てて逃げるつもりはないと言って相手組織に向かって行ったが、全員首を折られたり、謎の袋の中に、まるで掃除をするかのように放り込まれてしまった。
三番目に見た未来が自分としては一番怖かった。
敵組織に一人ずつ押し潰され、そのまま巨大ヤスリで身体全体をミンチにされる。しかもそれだけではない。陸の途切れたところに身体を押し付けられ、身体の骨を全て折られてしまうのだ。
相手はそれに快感を感じているようで、その大きな口を開けて笑って何人も仲間の命を刈り取っていくのだ。
俺は死にたくなかった。だから他の性格の良い奴に先に行かせた。
仲間の数が残り少なくなってくると、相手は飽きたように顔を背け、他のことに集中し始めた。そのうちに俺はまた、アジトを入れ替えるのだった。
それはそうと、俺はまた首を折られるという危機に瀕しているらしい。
だが、俺には必殺技・アジト替えがあるのだ!
今回も危険をやり過ごすぞ!俺は静かにそう決意した。
「あーあ、またシャー芯なくなってきちゃった。お母さん、替えのシャー芯ある?」
僕は中身のないシャー芯ケースの中を覗き込み、お母さんにそう問いかけた。
「いっつも最後の一本どっか言っちゃうんだよねえ…。」
少し頬を膨らませて、少年は呟いた。
日常風景 砂葉(saha/sunaba) @hiyuna39
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