無限ループ地獄

かざみ まゆみ

第1話

『無限ループにハマっている俺には三分以内にやらなければならないことがあった』

 クッソ、これで何回目だ?

 俺は悪態をつきながら部屋の天井を睨みつけた。

 無限とも思えるループにハマり、1000回目から数えるのを止めてしまった。

 最初の俺は、目が覚めてから3分後に発生した地震で倒れた家具の下敷きになって死んだ。

 だが気が付くとベッドの上に戻っていた。

 何度目かのループで、俺は家の外に逃げる事が出来た。

 しかし、地震直後に横転した車の事故に巻き込まれて死んでしまった。

 それから何度も場所を変えて逃げたが、隣家の屋根の下敷きになったり、パニックになった民衆に暴行を受けたりして死んでしまった。

 諦めてベッドの上から動かなくても、何度も繰り返す死のループ。

 無限に続くかと思われた。


 しかし転機は不意にやって来た。

 きっかけは玄関を出る時に、花瓶を倒した事だった。

 その時だけ何故か地震が起きなかったが、何故か通り魔に刺されて死んでしまった。

 俺は地震が起きなかったことに疑問を感じ、何度か繰り返すうちに『花瓶が倒れる』事が切っ掛けで未来が変わったと確信した。

 一見まったく関係ない事が、遠くの世界の出来事に影響を与える。いわゆるバタフライ・エフェクトというヤツだろうか?

 それから俺は、今までやらなかった事を試すようにした。

 玄関から出ず2階から飛び降りた時は、地震ではなく家がガス爆発を起こした。

 家から出た直後に家の中に戻った時は、何故か強盗が家の中に入ってきて刺された。


 そして……。

 俺は花瓶を倒し、家の門を飛び越え、黒塗りの車に突っ込み、眼前で停まった車から降りてきた政治家を殴り、怪しい連中に拉致される事で3分を乗り越える事が出来た。


 今は何故か、『核ミサイルのボタン』を抱えたまま逃げている。

 ループが始まってから、まだ『1日』が終わっていない。死ねばベッドの上に戻される。

 いつか普通に死ねる日を目指して、俺は今日もループを繰り返す。


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