青春のど真ん中を走る屑。

Asahi-Yuhi

走れ、鬼教師に怒られないように__。

 俺には三分以内にやらなければならないことがあった__。



 もうダッシュで走っている、俺。


 前髪が汗で濡れ、カッコつけてただただ走る。


 カッコいいだろ? ってそういうことじゃなくて、目的地に着かなければ・・・・・・!


 そう、後三分で校門がしまってしまうんだ!


 俺の通っている高校は名門校で、時間に厳しい。


 まあ、遅刻するのは本当に少ない。


 遅刻も一回や二回ならそんな怒られない。


 ただ、俺の遅刻は今年に入って二十九回。


 今日遅刻したら三十回目。


 なんとキリの良い数字! ってここで喜んでいる必要はなくて・・・・・・。


 あの鬼教師の三郎先生ことさぶちゃんが校門を閉めたら、一時間説教からの放課後に掃除コースだ。


 家の事情がある人は免除されるが、俺はなんにもない。


 あっ、屑だと思っただろ?


 その通りです・・・・・・。


 この前は女に「屑だから無理」と振られた・・・・・・それが俺・・・・・・の友達だ。


 俺の話ではねーし?


 あっ、確かね?


 俺の友達全員に聞いても答えてくれないとは思うけど、俺のことじゃないからな?


 断じて、な?


 えっと、確か、にゃーくん、あっ、この前宿題を見せて貰ったからにゃーくんは違って。


 えーと、あー、昨日俺をブスって言ったわーくんの話だった、かな?


 聞いても答えてくれるわけないから・・・・・・って、腕時計見たらあと三十秒。


 あと二十メートルくらいで校門だから大丈夫か?



「さぶちゃーん。俺、遅刻じゃねーよな?」


 校門にギリギリ入れた俺は近くにいた、さぶちゃんに聞く。


 まあ、大丈夫だろ?


 チャイムは鳴ってないし、校門もしまっていない。


「さぶちゃんって呼ぶな。あと、今日は学校公開だから校門空いてるだけ。さっきチャイムが鳴ったから思いっきり遅刻だ」


「え、ガチ?」


「てな訳で、生活指導室で待ってろ」


 容赦ないさぶちゃんの声で、俺の「三分以内に学校に到着する」という挑戦はあっという間に失敗した。


 ちくしょー!


 明日は成功してみせる、と心の中で誓った。

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