キミとオレ、三分前と後。〜ゲームの世界?どうせなら最推しに告白したいんだが〜

花月夜れん

最推しを推せ!!たとえ爆発しようとも

 大田智也には三分以内にやらなければならないことがあった。

 なぜならこの恋愛シミュレーションゲームの世界では、今日誰かとくっつかなければ爆発するバッドエンド期日の日であるからだ。

 大田智也は気がついたのである。ここが前世でプレイしていたゲームの中の世界であることを。

 目の前にいる可憐な美少女、仁野奈々が二番推しであったことを。


「仁野さん」

「大田くん」


 赤く頬を染めるその顔を智也はまだまだゆっくりと観察しておきたいと思ったが、さっきから頭上でタイマーがカウントダウンを始めている。これはエンドまでの時間制限だろう。どうする?一番推しはここにはいない。智也がすでに攻略を終えていたからだろうか。

 くっつくなら最推しがいいと考える。だが、爆発エンドは嫌だ。智也は悩んだ。こうしてる間にも時間は進む。


「仁野さん、オレは」


 キミが二番目に好きなんだ。そんな事を言えば爆発エンドまっしぐらだろう。だが、しかし!

 智也はやはり転生したのなら最推しを選びたいと願った。

 たとえ爆発しようとも!

 その願いを受けてだろうか、仁野奈々の後ろに見えたのだ。最推しの姿が!


「オレはキミのことが好きなんだー!!」


 おそらく攻略ルートであった彼女を選ばなかったせいだろう。爆発した。もうびっくりするほど激しい衝動が腹に襲いかかってきた。


「はやく起きなよ! 智也!」

「ぐぇ。ぐふっ。おい、やめろ!」


 腹バンバンを決めてくれたのは幼なじみの冬田波瑠。幸せな夢は儚く散った。


「何やってるの? 遅刻するわよ」

「波瑠、オレはだな……」


 頭上に浮かぶ三分タイマー。残り時間はあと少し? まだ夢の中なのだろうか?

 夢か、夢なら言ってしまおう。リアル最推しの彼女に。

 残り3秒。


「お前が好きだぞ」


 残り0秒。爆発はこなかった。ただ、冬田波瑠の顔が真っ赤になる。あれ、これは夢じゃ……。


「なななな、何言ってるの、ばかっ!」


 夢から覚めて三分後、智也と波瑠二人の関係が少しだけ変わった。

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