第24話『また飛ばされる』

勇者乙の天路歴程


024『また飛ばされる』 


 ※:勇者レベル4・一歩踏み出した勇者





 高床式の裏口から吸い出されると、巨木の森の内側をルーレットのボールのようにグルグル回る!


「め、目が回る~(๑﹏๑)」


 ビクニが目を回してしがみついてくる。


「結界が張ってあるんでぇ~₍ᐢ>◇<ᐢ₎!」


「外へ出るのもブロックするのかぁ(≧▢≦)!?」


「突然なことで、結界もビックリしたんですぅ! ちょっと待ってくださ~い₍ᐡ > ·̫ <ᐡ₎!」


 エイ!


 掛け声とともに、白兎は右の耳を間近の巨木にひっかける!


「「「ウワアアアアアアア!!」」」


 衝撃で結界にほころびができて、三人は明後日の方向に飛び出してしまう。


 ピューーーーーーーーーーーーーン



 ドサ



 ………………………………………あれ?


 わりに穏やかに着地できたかと思うと、ビクニも白兎の姿も見えない。


 途中で振り落とされたか……見渡すと起伏の多い草原で彼方に山並みが霞んで、その上はマーブル模様に空が歪んでいる。


 ウルトラQのタイトルみたいだ……古希らしい感想が浮かんでくる。


――あれは、ヤマガミヒメとスセリヒメの矛盾で歪んでいるんです――


「え、白兎、どこにいるんだ?」


――ここです、ここ――


「え、どこ?」


――ここです!――


 目の前にプルンと震えるものがあると思ったら、横に伸びた兎の耳の片方だ。付け根の方は霞んで空間に溶けている。


――巨木の梢に引っかかって、片方の耳しかそっちに行けてないんです――


「え、大丈夫?」


――アハハ、なんとか。とうぶん動けそうにないんで、こっちの耳だけそっちに伸ばしておきます――


「千切れないようにな。ところで、ビクニの姿も見えないんだけど」


――こっちにはいませんよ、あ……そっち、だれか来ますよ――


 え?


 振り返ると、少佐の姿のビクニとビクニに掴まえられたナース服の少女がいた。


「捕まえてきた」


「え?」


「あのヒコナとかいう侍女だ」


 そうだ、こいつが裏口を閉め忘れて、こんなところまで飛ばされたんだった!




 

☆彡 主な登場人物 


中村 一郎      71歳の老教師 天路歴程の勇者

高御産巣日神      タカムスビノカミ いろいろやり残しのある神さま

八百比丘尼      タカムスビノカミに身を寄せている半妖

原田 光子       中村の教え子で、定年前の校長

末吉 大輔       二代目学食のオヤジ

静岡 あやね      なんとか仮進級した女生徒

ヤガミヒメ      大国主の最初の妻 白兎のボス

ヒコナ        ヤガミヒメの新米侍女

因幡の白兎課長代理   あやしいウサギ

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