週末の予定

鷹橋

本編

 外は真っ暗である。寒くもある。

 ブラックの缶コーヒーがあったけえや。後輩に感謝。

「センパーイ、俺もあがりっす」

 おう、とだけつぶやく。あの人にも届かないことだろう。

 あの人もアクティブなフッ軽。またどこかしらで女を引っ掛けるのかね。いやな男だわ。

 目の前のモニターに映っているおれを見る。

 ……あーあまた髭伸びてやがる。脱毛してえが、余裕ねえや。今月もカツカツな暮らし。

 ……早く用意しないと。おれも仕事を切り上げるかね。

 遅い時間の男子更衣室は、もちろん誰もいない。なにをやろうとも許される。

 無論、近くに監視カメラはなし。

 鏡もあるので、ヒゲを剃る。

 しばらくいろいろする。

 終えたのち、自分のロッカーへ。

 ネクタイを緩めてから取る。窮屈な鎖だよこれは。社畜の証だわ。

 ワイシャツは丁寧にゆっくりとボタンを外してから取り外してたたむ。しわになったらいやだよね。アイロンきらい。

 白いティーシャツは大胆に脱ぐ。

 薄いピンク色の下着を上半身につけてから、その白いティーシャツを上に着る。

 昨日剃ったばかりだし脚はきれい。すっとストッキングも通るよね。

 フリフリの黒のワンピースを着る。これ動きにくくてきらいだけれどかわいー。

 顔はできてるよ、もう。

 大きな男物の通勤リュックからかわいい小さなリュックなんかをとりだす。

 男ものはここに置いていく。

 靴下をかえてからヒールの浅い靴を履く。

 完成! 着替えを終えたあたしは女の子!

「今日は金曜!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

週末の予定 鷹橋 @whiterlycoris

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説