ダンジョンが出現したので、やる気出す
咲春藤華
プロローグ
第1話 ダンジョン攻略の先駆者(1)
正面から一匹の虎型魔獣が左前足の長く鋭い爪で切り掛かってくる。それを剣の腹で流して魔獣の左横腹に入る。がら空きの腹に剣を左から右上への斬り上げ。魔獣は毛皮が鋼鉄のように硬く、ダメージをあまり与えられないので剣をスキル
ここはダンジョン内部の通路である。
どこかのゲーム世界のようにダンジョン内部では現実と大きく違うことが起きる。
今更、疑問に思うことも無くなったこの現象は本当にオープンワールドみたいなゲームと同じであった。蘇生不可能、死んだら終わりの命掛けのゲームのようだ。
このダンジョンを攻略するために前に足を進める。
ダンジョン内では何が起きるかわからない。
トラップも普通に仕掛けてある。殺傷性の高い弓矢、落とし穴、天井からギロチンetc...
今通ってきた道から新たなモンスターが襲ってくることもある。
前も後ろも上も下も右も左も。たとえただの通路にしか見えなくても油断は禁物だ。
通路を進む。
通路というか、洞穴というか。
ほかのダンジョンはレンガでできた迷宮のようなダンジョンだったり、壁の無い森林のようなダンジョンだったりと様々だ。
ここは岩場を無理矢理掘り進めたような通路である。
横も縦も人が通るには十分な幅がある。直径10mほどだろうか。
このダンジョンの出現モンスターは先ほどの魔獣系、
進み続けると大きく開けた場所に出た。
鉱山であったようだ。
多少の鉱物と金属類、ツルハシなどの入ったトロッコやレールがところどころに散らばっている。
廃坑にしては、まだ岩場にキラキラと鉱物が見える。
ダンジョン内のモチーフはバラバラである。似たダンジョンも存在するが、ここのような鉱山だったり、森林、迷宮など。
だからと言って、出現モンスターに統一はない。鉱山や迷宮にも魔獣系のモンスターも出るし、関連ありそうな鉱物でできた無機兵器系も出現する。
装備型収納装置、通称『アイテムボックス』を起動し、目の前に映るホログラムから装備枠に移動、大型の鶴嘴を選択・装備。
ほりほりタイムの始まりである。
鉱物を削らないように注意しながら周りの邪魔な石を砕いていく。
取り出せるくらいになったら、そのままアイテムボックスを起動し、収納を選択し、鉱物をスキャンし、収納する。
それを繰り返す。
このアイテムボックスには収納量は重量ではなく個数なので大雑把でいいので個数を最小限に抑える。
掘り続けると疲れるし面倒くさいので程々にして、残りは次来た人に譲る、か。来れたらだけど。
本命はこの層のボスなので先の通路に足を向ける。
ボスを倒せたらそのままゲートを抜けて帰還する予定なので、ここともおさらばだ。
この通路も油断せず、横の壁や地面の凹凸に注意し、進む。
罠を先に見つけると、自分が凄いと自己肯定感が上がり、調子に乗ってわざと罠を作動させたりする。横の壁から毒の矢が飛んできても目の前で掴んだり馬鹿なことをする。なかなかに楽しい。
そんなこんなでボス部屋と思われる扉を目の前とする。
ここに辿り着くまでに魔獣系を相手にしたため普通に疲れた。
ボス部屋に入る前に筋力強化と痛覚軽減のポーションを飲み、装備品の確認、武器の耐久値と刃こぼれの確認をする。
スクワットやジャンプをし、体を慣らす。
準備完了。
いざ、まだ見ぬボス戦へ。
「フッ……!!」
力を入れ、扉を押す。
ギ、ギィィィィィィ……
錆びついた扉のようで重く、引っかかる感じが手に伝わる。
「ふぅ……」
部屋に入る
部屋はドーム型で薄暗い。
100mほど先にある最奥は暗すぎてよく見えない。
緊張を張り詰めながら、足を進める。
静かな室内で、自分の足音が響き渡る。
心臓の鼓動も大きく、そして速く感じる。
だが、頭は冴え渡るようで目の前に敵がいることを理解している。
30mほど進んだところだろうか。
入ってきた扉が突然ひとりでに閉まる。
だが、後ろは振り向けない。
自分と敵とを囲むように松明が赤く燃え上がる。
初めて目の前の敵を視認することができた。
ゴリラだ。
5mほどの大きなゴリラだ。
筋骨隆々で目が赤く光る。
いや、ゴリラかこれ。
頭には横から立派な巻き角がある。
両腕、いや小手か。包むように金属でできているナックルをつけている。
それだけで強力なようだが、尾がヘビになっている。
視覚が増えるということはそれだけアドバンテージになる。
背後からの強襲が効かない。
そのうえ、こう、尾がヘビの敵は基本的、毒持ちじゃん?
長期戦になりそうな予感がする。
初見の敵であるため、攻撃モーションや攻撃範囲が知りたい。
無理に攻めると痛い目を見そう。
まずは小手調べと行こうか。
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