第11話:絶望の淵と闇を駆ける未来(2/2)

 対峙した瞬間、両者の間に緊張が張り詰め、静謐な空気が戦場を包む。一触即発の静けさが破れると、クロウが一瞬のうちに先陣を切り、レンもその後に続き、敵へと猛然と小太刀を振るって戦いへと飛び込む。彼らの行動は、逃げ場を失いながらも、絶望の中で希望を見出そうとする決意の表れだ。


 レンは敵との直接対決を選択し、対峙する敵の喉元目掛けて、気迫を込めた左から右へ振り上げるようにして斬撃を放つ。彼の小太刀は鋭く空気を切り裂き、敵の喉を一撃で断ち切る。血しぶきがレンの顔を紅く染め上げその中で真っ直ぐと強く光る鋭い眼光は、彼の冷静さが微塵も揺るがない証だ。さらにもう一撃側頭部に右から差し込み確実に仕留め敵が倒れる様子を確認すると、彼は次なる敵に集中を高める。


 敵が躊躇なくレンに迫る中、彼は身を低くして敵の攻撃をかわし、瞬時に反撃の姿勢を取る。敵の一瞬の停止は、レンにとって完璧な反撃のタイミングだった。彼は迅速に小太刀を抜き、敵の腹部へ深く刺し込み、致命的な一撃を加える。同時にくの字に前屈みになる敵の顎下から、垂直に小太刀を突き上げとどめをさす。


 しかし、戦いは予期せぬ方向へと転じる。突如、レンの左脇腹が不意の槍で貫かれ、激痛に顔を歪める。この状況下では、クロウは少し離れた位置で伯爵相手に反応し、敵に飛びかかるが、レンは見えない敵の策略には既に嵌っていた。


 この不測の事態は、レンにとって新たな試練だ。彼は迅速に後退し、さらなる攻撃を避けることに集中する。しかし、敵の魔法攻撃は容赦なく、炎と氷の魔法が交錯する嵐がレンを襲い、彼は限界へと追い込まれていく。


 クロウが他所で戦っている間に、レンは孤立無援の状態で炎と氷の魔法の嵐にさらされる。攻撃を避けながら、レンは痛みと闘い、レンは一瞬の隙を見て反撃を試みる。彼は敵に向かって疾走し、地面に設置された見えない罠を踏み抜く。突如、地面から無数の鋭利な岩の棘が突き上げられ、彼はそれを避けようとするが、不意に右足を捕られる。彼はバランスを失いつつも、この際、右足首が岩の棘によって深く切り裂かれ、血が流れ出す。その痛みと驚きで、レンは一瞬動きを止め、その隙にさらなる攻撃を受けることとなり、左胸に深い切り傷の重傷を負う。


 それでもレンは、敵の攻撃に屈せず、翔子を守る強い意志を胸に戦い続ける。敵の連続する魔法と物理攻撃の嵐にもかかわらず、彼の闘志は消えない。


 濃厚な煙が戦場を覆い尽くし、魔法の閃光が不規則に空間を照らす中で、レンの視界は著しく妨げられる。彼の目は、煙によって刺激され涙が溢れ、さらに、魔法の明滅する光によって一時的な盲目状態に陥る。この混乱の中、レンは敵の位置を確認しようとするが、視界が曇り、周囲の形や動きがほとんど識別できなくなる。煙と光の混沌に包まれ、彼はほとんど手探りで戦う状況に追い込まれる。


 体は限界を超えていたが、レンは翔子の安全のため、最後の一瞬まで抗い続ける。この絶望的な状況の中でさえ、彼は敵に向かって最後の力を振り絞り、闘いを挑む。


 レンは敵に囲まれ、負った傷により生まれたての子鹿のようにふらつきながらも、なお闘志を燃やしていた。村人たちの冷酷な笑いが周囲に響き渡る中、彼らは彼の弱った様子を嘲笑うかのように、挑発してその不安定な動きを舞うように避け、楽しんでいた。この絶望的な状況の中、彼と深い絆で結ばれたクロウが、レンの危機を遠くから感じ取る。


 クロウは雷のごとく異常な速さで村人たちをかわし、レンを背負って安全な場所へと疾走した。レンの命は既に極限状態に達していた状況にあったが、クロウの果敢な行動でぎりぎりのところで救われたのだ。


 二人がようやく安全な場所に戻ると、翔子が涙ながらに彼らを迎えた。「蓮司!」彼女の心からの叫び声が、レンにとって消えかけた意識をわずかにでも繋ぎ止める力となった。彼はかすかな微笑みを浮かべ、死を拒絶する決意を新たにした。「翔子さん、俺は絶対に死なない。まだやれることがあるから……」そう言って、レンは自分がこれまで躊躇していた最後の手段に訴える決意を固めた。

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