占星騎士アルカナライザー
L・M・バロン
第1話 愚者の目覚め
メフメト・エスタルシャーンの身体が、そこかしこに散らばる火花に彩られる。
目の前にいるのは、猛禽類を象った体を持つソードのエースホムンクルスと、
猛禽類のホムンクルスが爪の鋭く尖った脚でバッと飛翔し、背中から炎を生やした。それは翼へと変わった。そのホムンクルスはメフメトを仕留めるべく炎を出し、剣を形作った。
それに対抗するべく、メフメトはどこからかプラスチック製のパスのような物と、金属塊――四方が丸い長方形で、その真ん中にあるガラスで覆われた丸い穴が特徴的な――を取り出した。パスにはタロットカードの大アルカナの内の1つである、
金属塊はメフメトの腰に押し付けられ帯を生やし、メフメトの腰に巻きついた。金属塊は、
そして、金属塊のガラスで覆われた穴に魔術師のパスをかざしたメフメトは言った。
「変身」
その声と呼応するように、金属塊も音を発した。
『Arcana rise ! Magician !』
その瞬間パスは粒子となって散り、次にその粒子はメフメトの体を覆い赤い光を放った。
光は段々と実体となっていき、しまいには
―――――――――――――――――――――
和服を日常的に着る者などほとんどいないこの時代に、彼は常に甚平を着ており、足には足袋の上から二枚下駄を履いていた。
それに彼はある日ふらりとこの街に現れ、そして住居らしい住居も持っていないのか、この街にある廃ビルを自身の生活拠点としていた。名は体を表すと言うが、彼を表す言葉としては、その名の通りに風来坊と表すのが適切であった。
そんな彼がくねくねと街を練り歩いていたある日、耳に爆発音らしき物が届いた。それは彼が住居としている廃ビルの方から鳴った。
彼は一瞬慌て、その後に何が起きたのか理解した。そして確信した。遂に自分が出る幕になったのだと。
彼は、爆発音のした廃ビルの方へと駆け出した。
早く、早くしなければ。出来るだけ早く、あそこへ行かねば。今は何のホムンクルスが現れ、誰が戦っているのだろうか?誰が死に、誰が生き残っているのだろうか?少なくともコートのホムンクルスは現れちゃあいない。奴らが現れるには条件があり、しかも条件を突破した時には決まってアナウンスがある。だが、今までアナウンスはなかった。だったらせいぜいエース止まりだ。エースならば倒せる。
廃ビルへと向かいながら、彼は考えた。
―――――――――――――――――――――
ホムンクルスとマジシャンライザーが互いに攻防を繰り返す最中、ラバーズライザーがそこに横槍を入れた。
「邪魔だッ!鷹!」
ホムンクルスはラバーズライザーが繰り出した手刀により、炎の剣を持っていた右腕を根元から切断された。それにより鷹のホムンクルスは、すっかりラバーズライザーに怯んでしまった。
そこへ、かの男――眞柿風来が下駄をカラコロと鳴らしながら走ってやってきた。
その腰には、メフメトやラバーズライザーが身につけているのと同じ金属塊が巻きついていた。
「やっぱりエースだったか……変身!」
『Alcana rise ! Fool !』
パスをかざした風来は黒い光に包まれ、その光と同じ色の黒い、
フールライザーは右腕を失った痛みにより蹲る、ホムンクルスの方へと走った。
そしてフールライザーはホムンクルスの胸の中へ右腕を突っ込み、中にあるものを引き抜いた。
それが引き抜かれたせいなのか、胸に空いた風穴と右腕の切断面から血液を撒き散らした後に断末魔の叫びを上げ、ホムンクルスは塵となって消えた。
「ラバーズ、次はお前だ」
黒い金属のバトルスーツにある、ぎらぎらと光る白い複眼がラバーズライザーを見つめる。
フールライザーはすぐさまラバーズライザーの元へと向かい、先程鷹のホムンクルスから引き抜いたパスを腰の金属塊、ライザーギアに読み取らせた。
『Alcana rise ! Ace Sword !』
パスは炎となってフールライザーの体を包み、その炎はやがてホムンクルスが持っていた炎の翼と剣と化した。炎の翼はじりじりとラバーズライザーへと向かう。そして、
炎の剣は、ラバーズライザーの首を切断した。切断面は炎により焼け焦げ、それによって首を無くした体は、血の一切を出さなかった。
リンゴンと鐘の音が鳴る。
その音は新たな戦いを、占星の騎士――アルカナライザー達に伝えるものであった。
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