第14話チャームな右腕のアバウト家族
俺は少し、いやそれなりに緊張していた。
なんせ今から合うご家族の長男と、数日前までラブラブイチャイチャしていたのだ。まあその事を今日明かす気は無いが、俺の反応でバレる可能性はある。俺はポーカーフェイスができないのだ。逆に言うと表情がころころ変わるタイプのイケメンだ。どうでもいいか。
むしろ、あの呪いについて明かさなければいけないのが難しい所だ。
話した結果、今すぐ呪いを解けと言われるのであれば、そうしなければならないだろう。
ロロテナが望んで着いてきたとはいえ、向こうからすれば大切な息子が異種族になる呪いを掛けられてしまうほど過酷な仕事とも取れるのだ。
「ふう。行くしかないよな。」
俺は一度深呼吸をして気合を入れると、扉を開く。
「お待たせしてすまない。」
「あら、サイガ様。お久しぶりね。お出迎えありがとう。」
そうやって俺に声を掛けたのはロロテナの母のセセルアさんだった。
他にも見覚えのあるスクイーラ種が2名、そして見たところで全く思い出せないエルレイン種が1名……
「こちらこそ、わざわざ遠い村から来ていただき感謝する。ロロテナも喜んでいた。」
「いえいえ、私もロロテナの顔が見たくなっちゃってねぇ、無理言って連れてきてもらったんです。」
「む、そうなのか。」
お母さんが手の差す方には例のエルレイン種の女がいる。手紙を信じると、俺を運命の人だとかのたまう異常者なわけだが……ここで礼をしないのは俺のポリシーに反する。
「君が護衛なのか。無事に連れてきていただき感謝する。」
「えへへ、ありがとうございます……サ「では広間に案内しよう。道中でご家族に説明しなければならないこともあるしな。」
俺は4人をロビーへ通し、先導しながら話をすることにした。
「それで話さなければいけないことなのだが、今日の出迎えにロロテナがいないのにも関係する。」
「え?ロロテナに何かあったんですか……?」
俺が今から言うことに食いついてくるのは若そうな子、妹のミミレナだろう。
「命に関わるようなことではない。」
「そ、そうですか。てっきりあたしみたいに病気になっちゃったのかと……」
「怖がらせてすまない。今も元気に俺の冒険者稼業を手伝ってくれている。」
「では、一体何が……」
スクイーラ種の男、父のトトロカが聞いてくる。
「呪いだ。先日モンスターとの戦いで呪いを受け、その日からロロテナの姿は俺のようなウォーカー種のものとなっている。本人と話をした結果、今はまだウォーカー種の姿でいるようにしているんだ。」
「ウォーカー種……?ロロテナが……?」
やはりショックはあるだろう。俺だって家族が急によく知らない種族になっていたら信じられる気はしない。
いや、俺はもう家族に合うことはないのだろうが……
「信じがたいかもしれないが、事実だ。一度心構えしてもらおうと、この時間を取らせていただいた。」
「そ、その、呪いはそれだけなのですか?」
「ああ、それだけだ。」
「なら、心配する必要はないわよね。」
「え?」
お母さんの安心したような言葉に、逆に俺の方が面食らってしまう。
「確かに驚いたけれど、ウォーカー種って、サイガ様の種族でしょう?きっとかっこいい子になってるんでしょうねぇ。」
確かに今のロロテナは俺でも見惚れるくらいの超イケメンになっているが、逆にそんなに歓迎ムードで良いのかという気持ちになってしまう。
「まあ都会で流行りのイメチェン?とかいうやつなのだろう。あの子と話して決めたのなら、僕らが口を挟むことじゃないだろう。」
まさかこんな風に受け入れてもらえるとは。ロロテナの家族は懐が深いな。
エルレイン種の女はなんだか居心地悪そうにしているが、久しぶりの家族の再会なんだからもう少しその妙に隠せてないふてくされた顔をなんとかしてほしかった。
長話をしているとすぐ広間にたどり着く。
「あー……ロロテナにはここで待機してもらっている。ロロテナも少し悩んでいたから、大丈夫だと背中を押してくれるとありがたい。」
「もちろんよ。」
その言葉を聞いて、俺は広間の扉を開いた。
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