3店目「磯の香りがする麺料理」

こんにちは!麺好きには悪い奴はいないと妄信するトラ顔紳士です。

今日は一風変わったお店を紹介します。


ウメーディ大通り市場から歩くこと15分。

裏通りにあるお店なので、はじめは迷うかもしれないです。

この辺りはお世辞にも治安が良いとは言えなくて、昼間から酔っ払った男性や浮浪者らしき人が座り込んでいます。

初めてこの辺りに行く人は、慣れた人か逞しい冒険者と行くと良いでしょう。


お店は一見廃墟と思うような佇まい。

レンガ造りのお店ですが、レンガがところどころ朽ち落ち、雑草が生い茂っています。

看板は立っているので、なんとかお店と認識出来るレベルです。


一抹の不安を覚えながら中に入ると、お店の中は意外に綺麗で、シンプルですが明るい印象です。

カウンターテーブルも壁もしっかりと磨かれており、外観からは想像出来ないくらい清潔そうですね。

じゃあなぜ外観も綺麗にしないのか?と疑問に残りますが、何らかの事情があるのでしょう。


お店はヒゲモジャの店主が一人で切り盛りしているようです。

店主は小柄ですががっしりしており、腕の太さは僕の二倍以上はありそうですね。


オープンキッチンスタイルで、店主が料理を作っているところがはっきりと分かります。

何やらあまり見たことも無いような食材が並んでいますが、一体どのように使うのでしょうか?


今回注文した料理は、


・らうめん 八銅貨


聞きなれない名前ですよね。

これは常連さんの故郷の麺料理らしくて、店主がそれを再現したらしいです。


僕の注文にコクリと頷く店主。

黙々と調理を始めました。

グツグツ煮え続けるスープの温度を調節し、別の鍋で麺を茹で始めました。

鍋からは磯の香りが漂ってきました。

海鮮物をベースにしたスープなのでしょうか?


調理台に目をやると、何やら不思議な生物が置かれていました。

ずんぐりとした体全体を覆う、長い触手を持った生物です。

大きさは全く違いますが、僕の故郷ではイソギンチャクと呼ばれている海に住む生き物ですね。

この辺りではジャイアントアネモニーと呼ばれているようです。


ただ、僕の故郷ではごく一部の地域でのみ使われる食材ですが、通常は食べようなんて思いません。

もちろんウメーディでは、一度も見たことがない食材ですね。


調理台に置かれているってことは、料理に使われるのでしょう。

一体どのように使われるのか気になりますね。


イソギンチャクに心を奪われている間に料理が出て来ました。

底の深い大きめの器からは、磯の香りが溢れてきます。

少し白味がかった透き通ったスープ。

黄金色の麺がスープから見えていますね。

具材は麺とスープのみとシンプル。

「自慢の麺を味わって欲しい」

と店主のメッセージが込められているように感じますね!


早速スープから試してみましょう。

レンゲですくうと、スープには少しトロミがあります。

それと同時にスープから大量の湯気が立ち昇りました。

このトロミが、湯気を抑えてくれていたのかもしれませんね。


ハフハフ言いながら口にいれると、磯の香りが一斉に広がります!

まず最初二感じたのが貝の旨味。

どうやらただの貝では無さそうです。

しっかりと乾燥させた貝柱の濃厚な旨味です!

でもそれだけでは無いようです。


なんとぷっくり肉厚のその他二種類の貝も使用しているようです。

出汁に最適な小柄のシジュミ貝に、生でも食べられるほど鮮度の良いオースター貝。

鮮度が重要な魚介類ですが、このお店を支援するボウギルド長が独自の輸送経路を開拓。

鮮度の良い海鮮物が、比較的低コストで手に入るようになったそうです。


また、スープには干した小エビやキノコの出汁も加え、より複雑で濃厚な味わいとなりました。

クセのある様々な食材が混ざりあったスープ。

一口すするとまた次の一口が欲しくなりますね。


今度は麺を食べてみましょう。

うおっこれは!


スープ以上に濃厚な風味が口中に広がりました。

特に磯の香りがすごい!

これはスープだけの香りじゃありません。

麺自体から海の香りが溢れてくるのです!

むしろスープよりも麺からの方が磯の香りが強いのです!


しかも麺を噛むと、中からスープのようなものが溢れてきました。

これは麺であって麺ではないですね。


この麺は通常の小麦ではなく、別の食材を用いているようです。

よくよく見てみると、麺の形が不整で、麺にぷちぷちした小さい粒粒がついていますね。


店主にこの麺のことを聞くと、どうやら「ジャイアントアネモニー」の触手を乾燥させて麺のように作ってあるとのことです。

ジャイアントアネモニーは海に住む生物で、岩肌や海底に張り付いて触手で餌を取って生活しています。

ちなみに僕の田舎では「イソギンチャク」とも言われていますね。


それを麺に応用するなんて凄い。

驚きと美味しさであっという間に食べてしまいました。



店名:磯料理「親父の胃袋」

予算:~一銀貨

店の雰囲気 ★★☆☆☆

店員の対応 ★★★☆☆

料理の味  ★★★★★

コスパ   ★★★★★

バラエティ ★★★☆☆

総合評価  ★★★★☆

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