商店街で
ほぼ同じ頃、休日に母親に連れられて街の商店街へ買い物に行きました。
買い物と言っても、わたくしは母の後ろを追って歩ているだけでしたが……
その商店街は電車の駅から有名な寺院までの参道の両側に色々な商店が建ち並び、参道の上には屋根がかかったアーケード街でした。
わたくしは母との買い物は大好きでした。
いつも買い物の最後に喫茶店で食べるクリームソーダが楽しみでした。
本屋、おもちゃ屋、花屋、文房具屋など様々なお店が、幼いわたくしを誘惑していました。
いつの間にか、わたくしは母親とはぐれてしまいました。
近くに母親がいないと判断したわたくしは、泣いて探し回るのでは無く、冷静に商店街の入口へ歩き出しました。
わたくしは商店街入口の駅前交番に入り、お巡りさんに、
「母親からはぐれて、迷子になった」
と言って保護してもいました。
一時間ほど交番の休憩室でお菓子をもらって食べていると、母親が交番へ駈け込んで来ました。
泣いてさ迷い歩ているはずのわたくしを探す為に、商店街を何往復もしたが全然見つからず、警察に探してもらおうと交番に来たのでした。
お巡りさんは、
「優秀なお坊ちゃんですな、泣かないで冷静な態度で交番へ来ました」
「自分が迷子だと、ちゃんと認識していましたよ」
とわたくしを褒めてくれました。
わたくしは母親に無理矢理頭を下げさせられて、お巡りさんにお礼を言い家へ帰りました。
楽しみだったクリームソーダは無しになりました。
帰り道で母親が、
「なぜ、一人で交番へ行ったの?」
と聞いてきました。
わたくしは、
「探しても見つからないと思ったから」
「駅前の交番に居れば、きっと母親が来ると思っていたから」
と答えたそうです。
当然、家に帰ったら叱られました。
迷子になっても、周りを探しもしないで交番へ行く。
それが正しい行為だとしても、本当にイヤな子供だったなと恥ずかしくなります。
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