~次故物件~ 2軒目 就職
因みに今現在①の基準は「三年以内に事件・事故があれば申告義務」に改正されているらしいんだけどね。
俺って霊感とかそうゆうの全然ないしさ、ある意味で強いってか鈍感なのかな?
不動産の就職前の面接時なんかに
「君って幽霊とかって信じる方?」
みたいな質問があったぐらいで、今と同じように
「いや全然ないんです、多分、そーいうの鈍感な方でしてぇ」
って答えた。「あぁ、そうかぁ」って笑顔で言われてとりあえずこの時はそういう事件・事故の物件とかもあるから、苦手な人とかなら営業は向かないからねぇとそういった補足の説明をされた。
採用が決定して働くことになったんだけど、自宅から職場が少し離れていて・・・離れているっていってもまぁ大体、電車で片道三十分ぐらいの出勤時間だよ。でも、大変だろうって言われて近くの物件に寝泊まりしていいよって勧められたのよ。家賃も要らないし光熱費も会社持ちだって。一軒家だったんだけど『
一応に住む通常の手続きだけは済ませるのに、その事務的な処理も「仕事を覚えるついでだ」って言って、自分で手取り足取り教えてもらいながら指示に従い処理していったな。
その一軒家に一週間から一か月ぐらい住んでいると、次の入居者が決まったからって別のまた一軒家に引っ越しさせられた。まぁ、タダで住まわせてもらっているし身なので、文句は一つも言えないしなって思って指示に従っていった。
で、また次の家も全然近場で利便性がよくて、仕事終わりにどこかで飲んで帰るにも徒歩で二十分ぐらいだから飲みすぎてもなんとかなるし、本当に色んな意味で仕事が捗って良かったんだ。けど、一件目の時はあんまり気にしなかったからなんとなく、今思えば同じだったかなってことなんだけど、朝とか休日の日でご近所さんと出合い頭に遭遇した時、皆、なんか俺のことを避けてるような気がしてきたんだ。俺はまぁ、近場の不動産で営業、接客している訳だから愛想よく
「こんにちは~」
って、挨拶するよね。近所で働いていなかったとしてもまぁ、礼儀として挨拶は言わなくても会釈ぐらいはするじゃない。でもお隣さんなんかは確実に気が付いてないフリをしてちょっと足早に家の中に入っていくんだよ。
変だなぁって思いながら、まぁまたすぐに次の入居者が決まったら出ていくんだし、俺が不動産関係者だって分かれば物件の下見だの管理だのと思ってくれるだろうと考えて気にはしなかったんだけどさ。
二か月ぐらいしてから。
前に俺が一か月ぐらい住んでいた家にいま住んでいるって言う夫婦が、俺の店に物件探しに来たんだよ。なんだか急ぎで引っ越し先を決めている風な節があったなぁ。希望の物件探しのエリアを聞いても、一駅分ぐらいの離れた場所を指定してくるし即入居が可能ならどこでもいいって言うし、ちょっとただ事ではなかった。
「今お住まいの家でなにかあったんですかー?」
俺が同じ家に直前まで『タダ』で住んでいたなんてことを、会社から口止めされていたってのもあって絶対に言えないし、入居者募集中物件をデータの中から探し何も知らないフリして、ただの世間話、次の物件の適正でも聞いている風に聞いてみた。しかし「特に何もない」としか回答は得られなかった。
先ずはいつものようにいくつかこちらから適当に三つ四つ候補を出すと、その中から一つを間もなく選び、内見もせずに決めて契約していった。いくらなんでもおかしい。こっちとしては無駄なやり取りもなく契約件数を稼げていいんだけども、男性の一人暮らしとかで極たまにそういった契約をすることはあっても、夫婦で即決は明らかに変だった。
気になった俺は以前に住んでいた住人のデータを探して、名前や家族構成などを確認する。
そのままうちの会社が管理会社になっている近場マンションへチラシなどの設置やピンクチラシなどの廃棄、共有部の灰皿の交換や自転車置き場の整理が定期的に必要な業務があるので、ちょっと席を外すと専門の事務員さんに声をかけて向かった。
マンションで何人かとすれ違い、笑顔で挨拶をしながら作業をしているとふと思った。ここの誰かに俺が前に住んでいた家について聞いてみようと。すると比較的長く住んでいるだろう中年ぐらいの主婦っぽい人に他愛もない話から声をかけて、ストレートに聞いてみた。
「すいません、あっこの家って・・・前に何かあったんですか?」
と聞くと
「ああ、あそこはねぇ、何があったかは知らないけど数か月前にパトカーがいっぱい止まっていたねぇ。毎日ワイドショーは見てるけど、特にニュースには出てこなかったから、大したことはなかったんじゃない?」
俺はお礼を言って自転車の整理などをさっさと済ませて帰っていった。
仕事を早く終わらせて帰宅後、TVで流れるような大きな事件ではなかったかもしれないと思い、ネットで検索したり各新聞の小さな見出しに載っていないか調べていくと、それっぽい記載があった。
〇月〇日、○○県に住む金子さん宅の玄関に大量の血が散乱しているのを近所の住人が見かけて通報に至る。
『
この日、職場で確認した取引台帳に記載のある名前が家族全員、一致した。
この物件内で死者が出たわけではない為に、今でいう「事故物件」扱いには当然ならなかった。大量の血液が玄関先にあった。言ってしまえばそれだけだということらしい。
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