うたた寝の中で浮かんできたエッセイ

寿藤ひろま

魚釣りが怖い



僕は魚釣りが怖い。

とてもとても怖い。



大きなサメが水から出てきて、食べられてしまったらどうしよう。

とてもとても怖い。



船の上で釣りをしていて、大きな波にさらわれたらどうしよう。

とてもとても怖い。



人魚を釣り上げてしまったら、大騒ぎになってしまうかもしれない。

とてもとても怖い。



下から沈没船が浮かんできて、骸骨がこちらをのぞいてくるかもしれない。

とてもとても怖い。



何も見えない水の底から、生きてる魚が上がってくる。

お魚たちはどこからやってくるんだろう?



時々、大きなクジラが上がってきて潮を吹いているのを見る。

どうして水の中で生きていけるんだろう?



そんなことを考えていると、今度はお魚でもクジラでもなく、人魚が船に上がってきた。

僕は船の物陰に隠れてじっと人魚の方を見る。



僕が怖がっているのに気付いたのか、人魚はこちらに手を振りながら近づいてきた。

とてもとても怖い。



すると、後ろの方からお父さんの喜んだような声が聞こえた。

人魚がいるのに、とても余裕そうだ。



お父さんは怖くて動けない僕を置いて、人魚と話を始めた。

もしかして知り合いなのだろうか?



しばらくお父さんと話した後、人魚はまた海の方へと潜っていった。

やっぱり人魚はいたんだ。



後でお父さんから、あれは「だいびんぐ」の人だと聞かされた。

でも、足にヒレがついていたし、背中には大きな甲羅みたいなのを背負ってた。



僕はずっと人魚だと信じて疑わなかった。

何も見えない水の中を泳げるなんて、人魚に違いないからだ。



あれから数年が経った今でも、あの時見たのは人魚なんだと、心のどこかで僕は信じている。

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うたた寝の中で浮かんできたエッセイ 寿藤ひろま @SudoHiroma

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