6

 日雀はなぜ、透の力を知っているのかまず喋り出した。

 透の力はどうやら、鬼獣から受けた傷を癒す『鈴癒すずゆ』というもので、涼風から聞いたそう。

 涼風がなぜ知っていたのは透の父から聞いたらしく、透の父も同じ力の持ち主だったという。

「実は何年も前かにある事件があった。4名が死亡で近くには獣の爪痕が残っていた怪異事件というのが」

 と、日雀が言うと、一瞬、真が動揺し始め、

「あ、あの。さっき透に持病があるとお伝えをしましたよね?」

「ああ、あの先端恐怖症…ですか?」

 と、雲雀が問うと、真は首を横に振れば、透を見た。

 透は一瞬、迷いの目を見せたが、自分が言うと意思を伝えた。

「…いえ、他に僕、持病があって、人の血液とか小量ならいいのですが、あまりにも大量に見ると、意識が飛ぶんです。

 ただの意識が飛ぶというのではないんです、その。暴走をするんです、自分が自分じゃなくなるという。まるでケダモノみたいに」

 透はそう言い終えると、真が続けて

「行きつけの医者に言及しても不明の病気で、仮に勝手に『|覚醒≪めざめ》』と名付けています。あの、あまり他には公表しないでください、すずさ…涼風さんにも伝えていないので」

 と、代わりに真が言うと、

「そうか…その、行きつけの病院というのは話の流れから心療内科か?」

「はい、心療内科で、名前は…小鳥遊隠たかなしなばりという医者です」

 と、透が答えれば、雲雀はそうかと言った。

「すみません、話しが脱線してしまい…その、僕達にお願いがあると言っていたのですが、何でしょうか?」

 と、真はそう言うと、日雀は動揺しつつ、

「あ、忘れるところだったよ、君達にお願いをしたいのは、鬼獣とその鬼獣を操っている者を追って欲しいんだ。

 その、話の最初に話した、怪異事件である重要人物、犯人かもしれない者が行方をくらましているんだ。どこに潜伏しているのか分からず、警察も手を焼いているんだ」

「その犯人を追えば良いのですね?」

「そうだ、それと」

 と、日雀がとある紙を置いた。そこには交差した獣の牙と上に鋭い目がにらみを利かせている妙な文様だった。

「これは?」

「これは怪異事件の獣の爪痕の前に残された奇妙な文様の紙だ、下を見て」

 と、日雀が言う通り、下を見ると、『宿命の星さだめのほし』と文字は砕けているように見えたが、そう見えた。

「しゅくめいのほし…?」

「もしかしたら、さだめのほしかもしれない。読み方は謎だが、僕と日雀はその宿命の星というのをネットで調べたんだ。だが、どこにもヒットはしなかった」

 と、雲雀は残念そうに言った。

 宿命の星…何かを暗示しているように見える…何か頭の奥底からふいに思い出せと命令されているような気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

縁語り 夏目英 @flickerhalo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ