4

 帰り道。あたりは夕暮れ時で道がオレンジ色に染まっていた。

 透は真と一緒に何げなく家路を歩いていた。

 すると突然、ただならぬ気配に透は感じた。真も同じく何かを感じているのか、警戒をし始めた。

 そして、いきなり数枚の鋭い葉が自分たちの方へ来たと思えば、あらぬ方向へ飛び、目の前の茂みを切り裂いた。

 そこには昨日のような獣がいた。昨日の獣とは形態が違く、今度は熊だった。

 獣は巨体を起こし、血走った目で透を睨みつけた。そのあと、どしんと四つ足状態になれば巨大な爪で襲い掛かかろうとした。

「唱え鈴…」

 真がとっさに透の前に出て素早く鳴らない鈴をくるんと回せば、巨大な円が複数現れ、獣の攻撃を弾いた。

 それと同時に何かが獣の脇腹に丸い水玉が当たり、爆発した。

 獣は一瞬怯めば、唸り声をあげながら、飛んだ方向だろうかところを睨みつけると、

「大丈夫?」

 突然横から白い髪に白い犬の耳を生やした犬の獣人のどこか見覚えのある少年がいた。

「透、僕だよ、今日の休み時間の時の。あの時は名前を言って無かったね、ごめん。改めて、僕は1年2組の夜桜密よざくらひそかだ」

 透ははっとして理解した顔をしながら、密という獣人の少年を見た。

聞きたいことあると思うけれど…黙、そこで隠れてないで応戦して」

 と、密はしじまというと、白い兎みたいな形の紙を持った少年が渋々草陰から現れた。

 たれ耳の兎みたいに横毛が特徴で背丈は透と変わらないが、自分よりどこか大人びていた。

 それにどこか暗く寂しそうな雰囲気を出していた。

 黙はちらと透と真を見れば、ぎこちなく笑えば、紙に

「雷鳴」

 と、静かに唱えれば、ヒュッと、紙は空中へ跳べば、たちまち雷雲が形作られた。

 雷雲は形作られた後、すぐに獣に向かって雷を放った。獣は雷を避けたが、

「響き鈴」

 そう、とっさに透がフォローをすれば、獣は衝撃波によろめけば、黙はもう一度雷を放つように紙へ指示するようにすると、すぐさま雷雲は雷を放ち、今度は獣に命中した。

 動けない獣に追い打ちをかけるように密は水のボールのようなものを出せば、投げ

「水鞠」

 と、唱えると、ボールは獣に当たれば、花火のように小爆発した。

 獣は気を失えば、ずんとその場に倒れ伏した。そして、青い煙と共に消え去った。

 ふと、透は密が怪我をしていることにとっさに気づけば治そうと近寄り、怪我をあっという間に直した。

 その光景に密は驚きながら、人に戻れば、どこからか宵が現れ、まるで魂が分裂したかのようだった。

 透はぼんやりとその光景を眺めていたら、

「密は最近できたばかりの僕の友達。密は宵の魂を通じて犬の獣人に変化できるんだよね、改めて。

 僕は1年2組の杠葉黙ゆずりはしじま。さっきはぶっきらぼうでごめん」

「そうだったんだ、密も黙も強かったよ、びっくりしたよ、ね、透」

 と、申し訳なさそうにうつむく黙に真はにっこりと笑いながら、密と黙にそう言いながら話題を透に振れば、透はうんと呟いた。

 密と黙はどこか照れていた。そして真は続けて

「あ、僕は夢咲真で隣にいるのは僕の大親友の渚透なぎさとおる。二人ともよろしくね」

 と、真は言うと、密と黙は頷いた。

「あの、密、黙。さっきから僕の痣が疼いているんだけれど、まさか…」

 と、続けて透が言うと、黙はすっと、右目を見てという風に見せた。そこには卯という文字が浮かんでいた。密も左手首を見せると、戌という文字があった。

「透、あの休み時間はごまかして悪かったなと思ったよ」

「別に、気にしていないよ、密。あの、密と黙もあの獣を倒しているの?」

 と、透はそう問うと、黙は首を振り

「いきなり襲ってきたから、密と戦っていたんだ。でも、歯が立たなくて。真と透が丁度良いタイミングで来てくれて助かったよ」

 と、黙はそう答えた。

 そうだ、この二人と偶然に出会ったのは何かの縁でもあるかのように何か繋がっている様に透は感じた。

 それに、あの獣。執拗に自分を狙う。何故だ?

「また会おうね」

 そう、真が言うと、黙と密は頷き、去ってしまった。


 家に帰ったのはまた18時頃だった。

 また涼風に心配され、事の経緯を真が代弁した。そして、透がとっさに何か縁があるように偶然が重なりすぎていると付け足した。

 涼風はそうかと言えば、どこかへ行った。数分後。涼風は何か一通の手紙を持ってくれば透に渡した。

 誰の手紙だろうと思っていたら、涼風が開いてみてという風な顔をした。

 透は手紙を開けると、達筆な字が目の前に広がった。



 この手紙を見てるという事は何か同じような境遇の人との縁に出会ったのだろうと私は推測する。

 お前の使命は子の一族と共に干支を集め、干支の神様を打ち倒すのだ。

 例え、透の力が弱くてもいつか役に立つだろう、子を信じ、迫る脅威に立ち向かうんだ。

 お前は自慢の息子だ。自分を信じて生きろ。


父、きよしより


 干支の神様を打ち倒す…干支を集める…。

 少し、理解しがたいが、これが透の使命だという事を感じた。

「涼さん、これからも透を守り続けるけれど、僕達で解決できるの?」

「いや。ある人との協力がなければ難しいだろう。それは幻影課という場所だ。普通の役所や警察署とかでは無く、個別で秘密の場所がある。

 そこに私の友である透の父親の知り合いがいる。場所を記すから明日、学校休みだろう? 行きなさい」

 涼風はそう言いながら、小さい紙にすらすらと何かを書けば、透に渡した。

 幻影課。どんな所だろう。透はそう思いながら、涼風に受け取った紙を見た。そこには達筆に幻影課に通じるであろう地図が描かれていた。

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