2
帰り道を透は真と歩いていたら、途中の道で見たことの無い獣がいきなり目の前に現れた。
その姿は透と真よりも巨体で爪と牙は鋭いライオンのようだった。
「透、買い物袋お願い」
真はそう言いながら、買い物袋を透に任せるように渡し、透は自然に買い物袋を受け取った。
そして透を守るように前へ素早く出れば、右ポケットから小袋を出せば小さな鈴を一つ取り出した。
獣の方は余裕そうな目を浮かべ、低いうなり声をあげながら、臨戦態勢をとっていた。
「
真はそう呟きながら鈴を振るった。音は鳴らなかったが、振った途端に輪の衝撃波が獣を襲った。
獣はすっと巨体を軽々とぐるんと回れば、避けた。真は悔しそうに見やると、獣は地面を蹴って巨大な爪で襲い掛かり始めた。
「
真は冷静に鈴を上下に揺らした。すると、衝撃波が二重に起こった。獣は苦しそうに唸り始めた。
「終わりだよ。
真は容赦なく、攻撃を止めず、続けて鈴を激しく揺らせば、大きな衝撃波が出れば獣に致命傷を与えた。
あっという間の出来事だった。獣は動かなくなり、自然と青い煙と共に消え去った。
真は透を見ると朗らかな笑顔で自分を見つめていた。そして透が持っていた買い物袋を手に取ると
「大丈夫?」
と、優しい声で気にかけてくれた、透はただ頷くしかなかった。
やっとの思いで家に着いた。時刻は18時を回っていた。
家は一階建ての小さな戸建ての家だ。扉は横に引けば開く形式だ。
真は扉を横に開けば、台所付近から
「おかえり、遅かったね」
と、優しげな声が響いた。
涼風冴。透の父親と友人関係だったらしく、身寄りが居ない透と真を快く引き受けてくれた人だ。
背は真より少し低く、朗らかな五十代前半くらいのおじさんだ。
「ただいま、ちょっと建て込みで遅くなったよ。涼さん、ご飯手伝う?」
と、真はのんきにそう言いながら、買い物袋を台所の長机に置いた。
涼風は何があったんだ?と聞くと、真は後で言うよ。と言いながら、手を洗えば野菜を切り始めた。
透は通話のことは涼風には何も伝えず、手を洗い終えれば勉強するよと涼風と真に伝えれば、部屋へ向かった。
真っ暗な部屋に電気をつけた。
部屋は洋室で二段ベッドと机が二つという質素な部屋の構造だった。
透は右の自分の机に座って宿題をやり始めた。
あの急に現れた獣…一体なんだったんだろう。昔から何かと襲われる、あの獣。そして、いつも真が助けてくれる。
このまま真に守られてばかりで良いのか。不安に思いながら、宿題を進めていたら、真に夕飯ができたよと声をかけられた。
夕飯は鯖の味噌煮とご飯と味噌汁だった。
夕飯を食べながらついていたテレビのニュース番組を見ていたら
「速報です、今日の夕方頃、市内のとあるスーパーにてとある男性が怪我をして倒れていたようです。警察によりますと…」
と、ニュースのアナウンサーが神妙な顔をしながら、伝え始めた。
涼風はその事は何も咎めようとする素振りはなく、ただご飯を食べていた。
しんみりとした雰囲気だったが、涼風が今日の学校はとニュースの話から逸らすように急に聞いてきた。
真はまあぼちぼちかなと答えた。透は普通だったとそっけなく答えた。
次の日。透は真と一緒にいつものように自分達の高校へ向かった。
ふと、誰もいない道の横に怪我をした柴犬の子犬だが、大きさが手乗りサイズで普通の白い柴犬の子犬より不自然なサイズだった。
「可愛い。怪我してるね…」
「うん。真ちょっと良い…かな。すぐ済むから」
真は二つ返事をすれば、透は子犬の傍へ何もためらわず、近寄った。予想通り子犬は小さく威嚇をし始めた。
透はそっと怪我をしている右前足に手をすっと手を伸ばした。すると不思議な事に怪我をそた部分がすっと消えて治った。
子犬は戸惑いつつ、怪我をしていたであろう右前足を疑い深く見れば、ふと透を見た。軽くお辞儀みたいな動作をすれば、路地裏へと消え去った。
「透って、優しいね」
「ごめん、なんかほっとけなくて…」
透は歩きながら、申し訳なさそうに言うと、真は別に気にしてないよと言った。
あの子犬、昨日会った獣とは違う雰囲気だったなと、透は思い始めた。
もやもやとした気分で歩きながら、ふと時計を見ると学校に遅刻しないようにと真と足早に歩き始めた。
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