ねがいごと~小夜子のお店~CASE1

琴塔子

第1話

あれは、私と隼人が5歳の時だった。


家がご近所で、通っている幼稚園も同じだった私と隼人は、一緒に遊んでいるうちに恋に落ち、そして婚約した。


「大人になったら結婚しようね。」と毎日のように約束し、夏祭りの夜にはお小遣いでおもちゃの指輪を一つずつ買って交換した。


とてもロマンチックな夜だった。


私はその時からずっと、隼人のお嫁さんになるためだけに生きてきた。


ママにお料理やお菓子作りを教えてもらったし、掃除やお洗濯の仕方も教わった。


貰ったお小遣いは全て、隼人との結婚式やハネムーンのために貯金した。


隼人の婚約者としてふさわしくあるために、体型維持や美容にも気を付けていた。


私の中では将来、隼人と結婚する事はすでに確定していた…。


それなのに、倦怠期は突然始まってしまった。


小学校に入学した途端、隼人が恥ずかしがって私と話すのを避けるようになってしまったのだ。


ニコニコと話しかけに行った私に、隼人は怒った顔で「あっち行けよ!」って言ってきた。


ショックだったし悲しかった。


でも“今は照れているけど、きっとすぐにまた以前のように私とお喋りしてくれる”と信じていた。


隼人が他の女子とお喋りしているのを見ると悔しくて寂しくて辛かったけど、“私と隼人は結婚を誓い合った仲なんだ”と思えば平気だった。


隼人の倦怠期は意外と長く続いた。


中学の時も高校の時もずっと私を避けていた…。


そして現在、私と隼人の結婚に暗雲が立ち込めている。


なんと、隼人が他の女と浮気してしまい、その女と結婚しようとしているようなのだ。


別々の大学に通ってしまったために、隼人の浮気に全然気付かなかった。


浮気相手は隼人と同じ大学に通っている女。


サークル活動で知り合って意気投合らしい。


隼人が別の女と結婚するなんて、そんなこと許されるはずがない。


隼人と結婚するのはこの私だと、何年も前から決まっているのだから。


まずは何がなんでも隼人と浮気相手を分かれさせなきゃ!隼人のお嫁さんはこの私よ!!


私は日傘を差しながらコツコツと足音を鳴らし、分かれさせ屋へと向かった。






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