隠されたキオク その3

 さをちゃんはとても賢く人懐こい猫だった。

トイレは躾けなくても出来た。餌も自分が食べたい時以外は

好きなカリカリが目の前にあっても口をつけない。

盗み食いもしない。


夜はべったりくっついてネンネする。ずっと前からそうしていたみたいに

自然に寄り添ってくる。

部屋から出さない約束をしていたからか、他の家族には全く興味を示さず

私しか触らせないし、抱っこもさせない子だった。


よくできた子だと思ったけど、どんくさい…。

コタツの上に上がろうとジャンプするものの途中までしか届かず

宙ぶらりんで布団にしがみついていたり、

ベッドには上がれないので雑誌で階段を作っていたなど、

猫とは思えないほどどんくさかった。


うちに来てから外には行かない様にしていたが、外を眺めるのは大好きだった。

窓からは外の景色と鳥が飛んでいく姿も見ることが出来た。

特に鳥が飛び去る瞬間は、じーーーっとその姿を目で追っていた。


どんくさいけど、猫なんだなぁ…と猫がいる風景に癒されて日々を過ごした。


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