小1、夕樹のちょっと変わった日常

タカナシ トーヤ

小学校編

1-1・習った字だけ使ってね。

僕の名前は、渡邊夕樹わたなべ ゆうき


保育園のときに、漢字が大好きになって、毎日毎日辞書を見て漢字ばっかり書いていたら、小学校で出てくる漢字は全部書けるようになった。

自分の名前は、小学校で習わないのもあるけど、たくさん練習して、書けるようになった。

家族の名前も、全部漢字で書ける。


僕の名前は、画数が多いから、書くのが大変なんだ。最初に書けたときは、お父さんもお母さんもびっくりしてた。

でも、毎日書いていると、それが当たり前になって、僕が名前を漢字で書くことは、普通のことになった。


小学校に行った僕は、もちろん、テストのたびに、時間をかけて、名前を漢字で書いた。

柴田先生が、いつもより5分遅くきた日の昼に、国語の授業があって、自分の名前を画用紙に書いて、教室の後ろの壁に貼ることになった。


ペールオレンジの画用紙を選んで、名前を書いていたら、柴田先生が僕のところへやってきた。

「渡邊さん、あなたの名前は難しいから、学校で習った字だけ書ければ大丈夫よ。ゆうきの"夕"の字は、この前習ったわよね。だから、"夕"だけかけていれば大丈夫。」

「え、でも僕、全部書けるよ?」

「えぇ、それは知っているわよ。でも、この画用紙は、参観日で並べるものだから、夕だけでいいのよ。」

先生はにっこり笑っている。


なんで、テストの時は漢字でいいのに、掲示板に貼る時は、ひらがなと漢字で書かないといけないんだろう。

よくわからないけど、僕は名前を書き直した。


—わたなべ夕き—


へんなの。これなら、全部ひらがなの方がいいのに。




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みんなにあわせるか


その子ができることを尊重するか


ふたつの分かれ道のどちらを選ぶかで、子どもの成長はいかようにも変わっていく。



作者




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