第20話 あなた、本当は誰が好きなの?
葉月side……
「ごめんね、急に呼び出して。どうしても明日花さんに会いたくて」
ファミレスの隅で、強張って固まった彼女と向かい合うように座って、私はニッコリと微笑んで挨拶を交わした。
「私の名前は
「は、はい……お名前は存じてます」
目を泳がせて、狼に睨まれたウサギのように怯えて可愛い。
いや態度だけじゃなくて見た目も可愛い。
これは康介が手放したくない理由も分かる。私が男なら、いや、女でも付き合いたい。
(すごくヒィヒィ啼かせたい。縛って吊るしてローションまみれにして、全身性感帯に育て上げたい)
思わずした舌ずりが止まらない。
何だろう、この全身から醸し出されるエロい空気は。フェロモン? この子エロフェロモン満載なの?
「あの、葉月さんは……私に何の用ですか? 康介さんとならもう縁を切ったんですが」
「あぁ、そのことなら気にしないで? 私もアイツとは別れているから」
想定外の返答に明日花ちゃんも「えぇ⁉︎」と動揺を隠せなかったようだ。
やん、この子可愛いー。反応が素直ー。
「いやね、明日花ちゃんに振られてから康介のバカが腑抜けになっちゃってね? アイツをここまで骨抜きにした明日花ちゃんってどんな子なんだろうって気になって連絡したの。ただの好奇心で会いに来ただけだから気にしないでね」
「あ、明日花ちゃん?」
あ、そっちに反応するんだ。
でも可愛い。本当に全身舐め回したいほど可愛い。ワンチャン、ラブホに連れ込むことはできないだろうか?
「あの、私……もう彼氏が」
「本当に可愛いよねー。ねぇねぇ、明日花ちゃんって康介とどれくらいセフレだったの? 本当に羨ましい。こんな可愛い子とエッチできたなんて。あー、やっぱぶん殴ってやれば良かったかな?」
「ぶ、ぶん殴る?」
自分が殴られると勘違いした明日花ちゃんは怯えるように体を竦めたが、大丈夫。殴らない殴らない。生憎こんな可愛い子を殴る趣味はない。縛る趣味はあるけれど。
「あの、その……セフレって言っても、数ヶ月に一回会うか会わないくらいで……。だから多分、葉月さんが思っているような感じでは」
えぇー、あの
「でも関係を続けていたってことは、それなりに好きだったんでしょ? あんなヘタレ粗チンのことを」
今の康介はフリーだし、明日花ちゃんの大事さに気付いたのだ。きっと今なら厳しく嫌味なお母さんに逆らってでも明日花ちゃんを守ると思うけれど。
だが彼女は強く下唇を噛み締めて、真っ直ぐに見つめてきた。
「私、もう康介に対して未練も何もないので。葉月さんも何を言われて私に会いに来たか分かりませんが、放っておいてくれと伝えててください! 確かに昔の私は康介に依存していて縋っていたけど、それは寂しさを埋めるためのもので何も生まれなかった。でも壱嵩さんは私のことを尊重してくれて、一人の人として大事にしてくれるんです。私は壱嵩さんを絶対に失いたくないし、きっと縋ってでも諦めないです」
力強い眼差しに、思わず私が怖気付いてしまう。
——はぁ、康介。アンタのつけ込む隙は一ミリもないわ。
「良かったね、明日花ちゃん。素敵な人と出逢えて。その人康介の何倍もいい男だわ」
ハッと我に返った明日花ちゃんは、またしても焦るように取り乱した。やっぱりこの子、可愛い。
「ねぇ、明日花ちゃん。よかったら私とお友達になってくれないかしら?」
「わ、私とですか? 何で?」
「可愛い子が大好きなのー! あ、性的にもいけるけど明日花ちゃんはノン気でしょ? 大丈夫、その気もない子に強引に攻めるようなことはしないから。単純にね、あなたのことを気に入っただけ」
「そ、それなら……」
——ここで言われるがままに連絡先を交換してしまう子だから、康介のような悪い男に弄ばれたのだろう。
(この素直さ、ちょっと危なっかしいなァ。でもこんな子だから私も康介も惹かれているんだろうね)
やっと安心したように笑みを溢す明日花ちゃんを見て、私まで釣られて笑ってしまった。
「今度、彼氏の話も聞かせてね?」
「はい、わかりました。葉月さんも康介のことをよろしくお願いします」
私も康介とは別れたんだけどなと眉を顰めたけど「分かったわ」と了承した。
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