第7話 仙羽衣




 それ、大仙人様が栞太かんたの為に作った特別仕様の宝貝パオペイ仙羽衣せんのはごろもだよ。

 八雲やくもが言った。


 特別仕様の宝貝パオペイ仙羽衣せんのはごろも

 ひらりひらり、常に優雅に揺らめいている、透き通るような細長く美しい衣。

 肩にかける。

 大仙人の仙力で常時使用。

 人間である栞太かんたを自動的に守る。

 修行次第で、栞太かんたの意思により様々な形に変化でき、飛翔するもよし、寝床にするもよし、攻撃するもよし、守護するもよしの最強の宝貝パオペイになる、かもしれない。


「あの。八雲やくも師匠」

「何ですか?栞太かんた少年」

「あの、とある書物では、仙人の素質がない人間が宝貝パオペイに触れると、ミイラ化するって書かれていたのですが、俺は大丈夫なのでしょうか?」

「ほほう。栞太かんた少年の世界にも宝貝パオペイがあるのですか。実に興味深い。弩九どくが知ったらさぞかし喜ぶね」

「はあ」


 弩九どくという名前を聞いた栞太かんたは、背筋が凍るような思いがしたので、誰ですかと問わずに受け流した。


「うむ。いい質問だ。俺が親切丁寧に教えよう」

「お願いします」

「ミイラ化しますね。宝貝パオペイに触れたら、ほんのちょびっとでも、即刻ミイラ化です」

「はい。八雲やくも師匠」

「何ですか?栞太かんた少年」

「この宝貝パオペイは俺の肩にかけられているように見えるのですが、布越しだったら大丈夫だという事でしょうか?」

「いいえ。身に着けている衣服や装飾品、武器なども身体の一部と見なされるので、それらが宝貝パオペイに触れたら即刻ミイラ化です」

「では何故俺はミイラ化していないのでしょうか?もしかして、俺は」




 ごくり。

 栞太かんたは生唾を飲み込んで、己を背負って岩から岩へと飛び跳ねる八雲やくもに尋ねた。




 もしかして俺は仙人の素質があるんでしょうか。











(2024.3.6)



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