第1話 行ってらっしゃい
目玉焼きの乗った皿をテーブルの上に置くと、俺はエプロンを脱ぎ2階へと続く階段を登る。
階段を登った向かい側にある部屋の前に立つと2回程ノックをする。
返事がなかったためドアを開けてベッドのうえで寝ているそれに向かって声をかける。
「おい
「ん~~…あと5分だけ」
それは被った毛布から頭すら出さずにそう言った。
実はこのやり取りをすでに5回ほど繰り返している。
そろそろムカついてきたので被った毛布を引っ剥がして言った。
「さっさと起きやがれ!バカ妹!」
「も〜、分かったよ〜」
そう言うと渋々といった感じで起き上がる。
「着替えるから下行ってて。お兄ちゃん」
∆ ∆ ∆
それから四十分ほどするとようやく菖蒲が降りてきた。
「折角の出来立てが冷めちゃったじゃないか…」
朝早く起きて朝ご飯を作ってやってるというのに。
「ごめんね~、お兄ちゃん。それより…」
菖蒲は俺の前に立つとゆっくり一回転した。
「どう?制服。似合う?」
「あぁ、とっても似合ってるよ」
俺の妹は母に似て顔が良いんだ。
どんな制服であっても似合わないなんてことはないだろう。
その返事に満足したのか菖蒲は朝食を食べ始める。
「いただきま〜す。─────この目玉焼き、冷えてて美味しくないよ?」
「お前の所為だろ!?」
そんな他愛のない話をしながら菖蒲が食べているのを眺めていると刻々と時間は過ぎていった。
「私、もういかなきゃ!」
そう言って菖蒲は立ち上がると用意されていたスクールバックを持って玄関に向かう。
「玄関先まで送るよ」
そう言って俺も玄関に向かう。
サンダルを履き、扉を開けると眼の前に広がるのは満開の桜並木。
その美しさに俺も菖蒲も一瞬心を奪われてしまう。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん…?」
「入学式、来てくれるんだよね?」
「もちろんだ。特に用事も入っていないからな」
俺の答えを聞き、菖蒲は満面の笑みを浮かべる。
「良かった!───それじゃあ、行ってきます。お兄ちゃん」
「おう!行ってらっしゃい!」
ヤバい、泣きそう。
母が病死してからちょうど十年。
仕事の関係で父も家に居ることが少ないから、家事や菖蒲の世話は俺が全部やってきた。
俺にとって菖蒲は、妹と言うより娘に近い感じがする。
しかし、一つ喜べないことがある。
菖蒲の通う学校についてだ。
校名は『対ギフト犯罪取締機構付属第二高等学校』。
GSO職員を育てるための高校だ。
菖蒲がGSOに憧れを持っているのは知っていたが…
少し厄介かもしれない。
∆ ∆ ∆
「──────昨年から続く、連続高速トンネル爆破事件。その容疑者とされるスイセンと名乗る仮面の人物。過去にGSO施設内に侵入した覆面の人物と同一人物とされて…」
俺は黒いローブを纏い、特注の仮面で顔を隠す。
さて今日も人類を脅かすとするか。
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忙し過ぎるので週1以上投稿を目指してます。
とりあえず今週はノルマ達成だぜ
人類を脅かしてぇ! 堪ったもんじゃない! @torotamaudonn
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