第57話 マリエラの返事
ジャンの口からマリエラを養子縁組するという言葉を聞き、とっさに本音が声に出てしまったペテルは真っ赤な顔でマリエラに言った。
「マリエラ、改めてプロポーズさせて下さい」
ペテルは跪き右手を胸に当て、
「マリエラ、貴女のことを大事にすると誓う。僕の側にいて僕を支えて下さい。貴女のことも全力で支えます。愛しています。僕の妻になって下さい」
突然のプロポーズにマリエラは答えることができなかった。
「ペテル様。どうかお立ち下さい。私が貴方にして差し上げることは何もないのです。身寄りもなく財産もありません。貴方なら名家のお嬢様とのご縁もあるはずです」
「マリエラ!お兄様のことが心配なら側にいて支えてあげてっ!」
マリエラの返事にフルールがぴしゃりと言った。
マリエラはぐっと息を飲みゆっくり吐いて、
「そ、そうですね。···ペテル様よろしくお願いします」
マリエラは自分の気持ちに正直になり、ペテルの気持ちを受け止めた。
ペテルの手を取り、マリエラは今までにない笑顔で微笑んだ。とても綺麗だった。
ペテルは立ち上がりしばらくマリエラの顔に見惚れていた。
「ああ、いいものを見せてもらったよ。私はもっと生きていたいと思ったよ。マルク先生、手術をお願いします」
「はい。承知しました」
後ろの方にいて居場所のなかったマルクは、しっかりとした返事をしていた。
ジャンの部屋から出たペテルはマリエラを伴って応接室に来ていた。
先ほどの突然のプロポーズで二人ともぐったりとしていた。
「マリエラ、すまなかった。本当は二人きりの時にプロポーズをする予定だったんだ」
「···えっと、プロポーズすることは決めたいたということですか?」
「ああ、そうだよ。僕は自分の気持ちに気がついたんだ。マリエラは誰にも渡したくない。親友のミトラにだって···」
「えっ、ミトラ様ですか?私はミトラ様のことはなんとも思っていませんが···」
「そうなのか?では、プロポーズの返事は父さんの前だからという訳ではないんだね?」
「はい。···私も自分の気持ちに正直に答えます。私はペテル様のことが、す、好きです」
マリエラは真っ赤な顔でペテルを見つめ気持ちを伝えた。
「良かった。マリエラ、ありがとう」
ペテルは向かいのソファーにいるマリエラの隣に行きそっと抱きしめ、頬にキスをした。
マリエラは腰が抜けそうになり、ソファーから滑り落ちそうになった。
ペテルは優しくマリエラの肩を寄せ、
「驚かせたね」
と耳元でささやき、向かいのソファーに戻った。
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