第9話 ようかめ!

 今日(3月9日)から正式なホタテ漁の操業開始でゴザル。3月から5月までは漁場造成というもので、昨年の取り残しとヤスデ駆除が目的でゴザル。


 拙者は補助員なので、本来ならホタテの選別に集中していればいいのでゴザルが……


「万吉くん、ハヤスケを八尺に引っ掛けて!」


「この緑の縄をここに引っ掛けて!」


「このロープの先の鉤爪をここに引っ掛けて!」


「クレーンの鉤をここに引っ掛ける!」


 という具合でやることが増えたでゴザル。理由は、第七オホーツク丸(仮称)に現在入院中の先輩がおり、2年目の拙者が代理として張り付けになっているからでゴザル。


 補助員は、一つの船に3日ずつ乗って、その船のサポートをするでゴザル。

 現在、補助員は8名いるでゴザルが、4名はベテラン(年齢上の理由で補助員に転向)、3名は新人。ベテランが一つの船に固定だと他の船が困るでゴザル。かと言って新人を代理にはできない。という訳で2年目の拙者に話が回ってきたのだと思っているでゴザル。


 という訳で、今の拙者は可能な限り、入院した先輩に近づくことが求められているでゴザル……。


 この話についてはまた次回以降書いていくとして、この日の漁で印象的だったのは、稚貝と小さい貝の多さでゴザル。稚貝は大体3センチくらいまででゴザルが、それよりも大きいが、正貝として水産会社に卸せないサイズのホタテがあるでゴザル。


 端的に言えば、人差し指の長さより小さい貝はダンブルに入れずにそのまま放流するか、一度回収し、あとで放流するでゴザル。


 この日は、一度回収することになったので、大きさによってダンブルに入れればいいか、回収用のカゴに入れるか神経を使わなければならないので、精神的疲れが少し多かったでゴザル。


 あとは、ヤスデ駆除が目的の一つでゴザったが、マカゴ一つ分と少なくて驚いたでゴザル。



 用語解説

・ヤスデ

 オホーツク沿岸ではヒトデのことをことをこう呼ぶ。


・ハヤスケ

 2〜4メートルの棒の先に鉤爪がついたもの。

 八尺を引き寄せたり、出港の際に船を押し出すのに使う。


・張り付け

 船員に欠員が出たときに特定の補助員が代理で一週間から数ヶ月配属されること。ある程度習熟した補助員が配属される。


・ダンブル

 船の中央より前側にある魚倉。甲板に蓋があり、それを開けると空洞になったいる。


・マカゴ

 獲った海産物を入れておくカゴ。海産物が60キロくらい入るらしい。

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