第7話 むいかめ!

 今日は『道具合わせ』と呼ばれる予行演習の日でゴザル。試しに漁に出て、足りないものが無いか確認するのでゴザル。

 気温が低いせいか、海面はうっすらと凍っているでゴザル。


 出港の準備として拙者がすることとして、船を停めるのに使っている前後各2本ずつのロープのうち、それぞれ1本を外すことと、前側のピンドルを外すように言われたでゴザル。


『いや、貴方、2年目でしょう?』

 と思われるでゴザろうが、拙者は補助員なので、色々な船を回るでゴザル。そして、今乗っている第七オホーツク丸(仮称)は昨年の10月以降乗っていなかったでゴザル。理由は、10月頃に第七オホーツク丸(仮称)に乗った後、第四オホーツク丸(仮称)で怪我人が出たため、第四で数週間張り付けになり、第七に乗ることがないまま切り上げを迎えたからでゴザル。

 このため、第七のやり方で拙者が忘れていることが多いだろうということで、その点をしっかりと説明してもらっているところでゴザル。

 ちなみに拙者はこの第七オホーツク丸に張り付け中でゴザル。病気でひと月ほど入院することになった方がいるからでゴザル。


 出港の準備が終わると、船頭が船に切幣きりぬさとお酒を撒いたでゴザル。今年初めての漁なので、一年の無事を祈願してのことでゴザル。


 漁に出た場所は、昨年の6月以降の本操業で漁をしていた場所でゴザル。つまり、昨年の取り残しを獲ったでゴザル。


 漁をする場所(漁場)は三つほどに分かれており、年によって変わるでゴザル。3〜5月の間に昨年の取り残しを獲って、稚貝を撒き、数年後に成長したホタテを獲るでゴザル。


 漁場は70マスくらいに分かれており、ひとマスは15〜20分、船が進む距離でゴザル。この時期だと1時間半くらいかけて5マス分の距離を曳いてホタテを獲るでゴザルが、今日は予行演習ということもあり、ひとマス分曳いたら水揚げしたでゴザル。


 そういう訳で、八尺にかかる量は少なく、3回水揚げして280キロだったそうでゴザル。


 漁が終わった後は、倉庫で八尺の予備を作る作業をして終了でゴザル。


 予行演習も終わったので、明日は倉庫で作業でゴザル。


 用語解説

 ・切幣

 小さな正方形に切った紙で祓い清めるために使う。一般的には榊の葉や米や塩を混ぜるが、船上で撒くためか紙のみを使った。


 ・ピンドル

 停泊中の船が岸壁にぶつかって傷まないように吊るしておく緩衝材。緩衝材を数珠状に連ねたものやバランスボール大のものがある。


 ・張り付け

 船員が長期間、漁に参加できなくなった場合に、特定の補助員がその船の船員の代わりに漁に参加すること。


 ・切り上げ

 その年の漁を終えること。ホタテ漁の場合は、11月28日頃にその年最後の漁を行い、29日、30日頃に船内の片付け、12月1日頃に船の陸揚げを行い、終了する(地域によりずれがある)。

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