第一七話 再び●●● そして新たな力が判明


 もにゅっ♥


 以前と同様、真正面から鷲掴みにする形。


 あまりにもいきなりな行為に、俺とソフィアは瞠目せざるを得なかった。


「な、なな」

「なに、を……!?」


 こちらの疑問に対しエリザは滔々と受け応えた。


「揉めばわかる。ゆえにオズ殿、わたしの乳房を揉みまくっていただきたい。出来るだけ力強く、乱暴なやり方で」


 意味がわからん。


 そんな目でエリザを見て、それから、ソフィアへと視線を移す。


 彼女の瞳はこう述べていた。

 とりあえず、やってみたら? と。


 幼馴染みの許可を得た結果、胸中には現状に対する好奇心と……

 鷲掴みにした褐色おっぱいに対する欲望のみが、残った。


「じゃ、じゃあ……やるぞ」

「うむ。遠慮せず、思い切りやってくだされ」


 その要望に応えるべく、俺は最初から全力で乳を揉み始めた。


 ぐむにゅっ♥ ぎにゅっ♥ ぎゅむむむっ♥


 爆乳全体を強く握り締めるように、捏ね回していく。


 やはりエリザのそれは揉み心地が最高だった。


 ソフィアの乳はたとえるならスライムおっぱいといったモノで、別にそれがイヤというわけではないのだが……俺の手には少々、柔らかすぎる。


 反面、エリザの褐色おっぱいは結構な弾力があるため、実に揉み甲斐があるのだ。


 そういう意味において、俺とエリザは相性抜群であると言えよう。


「んんっ♥ そう、そんな感じ、でっ……♥ お上手、ですぞ、大賢者殿っ……♥」


 かなり乱暴に揉んでいるのだが、しかしエリザは尻尾を振って、嬉しそうに微笑んでいる。


 そんな美貌に発情の色が混ざり始めた頃――

 彼女の体表を走る刻印が、発光し始めた。


「んっ♥ ふっ♥ くぅっ♥」


 こちらの乳揉みに合わせて、甘い吐息を漏らしながら、獣耳と肩を震わせるエリザ。


 もにっ♥ もにっ♥ もにっ♥

 ぐみゅんっ♥ ぐみゅんっ♥ ぐみゅんっ♥

 ぎにゅううううううううううううううっ♥


 相手への気遣いをあえて無視しした荒々しい所作。

 それはやがてエリザを極限へと導き、


「ん、きゅうううううううううううっ♥」


 絶頂に達したのか、全身をビクビクと痙攣させながら、奇声を放つ。

 その瞬間、刻印の発光が一段と強くなった。


「ふっ♥ うっ♥ ……はにゃあ♥」


 舌を「でろん」とまろび出しながら、エリザが後方へと倒れ込んでいった。


 その体を慌てて抱き留めながら、俺は彼女へ問いを投げる。


「いったい、何が目的だったんだ?」

「フゥ~ッ……♥ フゥ~ッ……♥」


 未だ「びくんっ♥ びくんっ♥」と小刻みに絶頂しつつ、彼女は必死に指を動かし……


 パラメーターを指した。


「……えっ、マジで?」


 いち早くソフィアがそれに気付く。

 俺はやや遅れる形で、エリザの意図を掴んだ。


「パラメーターが……変化してる、よな?」


 さっき表示されていた数値ではない。明らかに上昇している。

 それも、全項目が。


「訓練によるものでは、ないよな?」

「う、うん。たった数分程度の訓練じゃ、ぜんぜん上がらないわよ」

「となれば、つまり……」

「そ、そういうことに、なるわよ、ね」


 なんか気まずい。


 それも無理からぬことだろう。


 我が身には彼女等を強くする力が秘められている、というだけならば、まったくそんな気持ちにはならなかった。


 しかし……


「胸を触ったら強く出来るってのは、なんだか、なぁ……」


 複雑な感情を込めながらの呟きに、そのとき、ソフィアが反応を示す。


「いや。多分だけど、おっぱいに限った話じゃないと思う」

「えっ? それは、どういうことだ?」

「よく思い返してみると……あたしのパラメーターも前に比べて、けっこう上がってるのよね。それで、なんだけど……」


 もじもじと恥ずかしそうに内股を擦り合わせながら、ソフィアは言い続けた。


「よ、夜とかに、さ。そのぉ~……するじゃ、ない? 色々と」

「あ、あぁ」

「そのときも、光ってたわよ、ね? あたしの刻印」


 た、確かに。


「ってことはさ。たぶん、なんだけど……えっちなことをして刻印が光ったら、皆が強くなれるんだと、思う」


 なんか余計気まずくなったんだけど。

 ていうかあのピカピカ光るやつ、そんな意味があったのかよ。


「「…………」」


 互いに何も言えなくなる。

 その一方、エリザはようやっと気を落ち着かせたようで。


「これは実に! 実に素晴らしい発見ですぞ、大賢者殿っ!」


 まぁ、そうだろうね。表面的にはね。


「懸念されていた要素の一つ! 戦力の質が、これで大きく改善される! あぁオズ殿! やはり貴殿は我等が救世主っ! このエリザ、とことん惚れ込みましたぞっ!」


 感極まった調子でハグしてくる。


 筋肉質だが柔軟性に富み、ほんのりと汗の臭いがする褐色肌。

 それは実に健全で、だからこそ、体の一部が反応しそうになる。


 そうした生理現象をどうにか抑え込んでいると……


「オズ殿。以前にも申し上げた通り、貴殿には欲望のままに動いていただいたい」


 エリザが耳元で囁いてきた。


「記憶を取り戻すだけならば、これまで通りでも問題はありませぬ。しかしながら、貴殿の肉欲が皆の強化に繋がるとなれば」


 彼女はそこで言葉を止めたが……皆まで言わずとも、わかる。


 もっと積極的になれと、そう言いたいのだろう。


 そんな彼女に対し、俺が出した答えは、


「努力は、する」

「……ふっ。初心な御方だ」


 妙に色っぽい声音で囁いてから、ぺろりと頬を舐めてくる。

 思わぬ行為に、ドキリと胸が高鳴った。


「むぅ……! デ、デレデレしてんじゃないわよっ!」


 ぷりぷりと怒るソフィア。

 エリザは彼女の様子に「くすり」と笑みを零してから、身を離し、


「……貴殿の特別な力さえあれば」


 不意に、真剣な面持ちとなって、言葉を紡ぐ。


「オズ殿。話しておくべきことがある。此度の任務に関するものだ」


 少し前、あえて秘匿した内容について、話し始めた。


「ソフィアともう一人、同行者を付けると述べたこと、覚えておいでか?」

「あぁ」

「あいつは……仇討ちを、願っておるのです」

「仇討ち?」


 オウム返しに問い尋ねると、エリザは一つ頷いて、


「奪還していただく土地にはかつて、数多くの《戦乙女ヴァルキリー》達が駐在しておりました。しかしながら、《眷属》達の襲撃に遭ったことで……そのほとんどが、命を落とした」


 エリザは言う。

 同行者は唯一の生存者であり、そうだからこそ、仲間の仇討ちを強く願っているのだと。


 それ自体は理解出来る話だ。

 同情だって出来るし、叶えてやりたいとも思う。


 ……だが。


「あいつは第七世代の《戦乙女ヴァルキリー》。つまりは戦力外ということになる」

「そうか。だから今の今まで、同行者の詳細を伏せていたんだな」


 エリザは獣耳をしゅんっと伏せながら、自らの感情を吐露し始めた。


「わたしの判断は不合理極まりないものだ。しかし、それでも……オズ殿であれば、あいつの心を覆うモヤを、払ってくれるのではないかと」


 こんなふうに頼られたなら、返すべき答えは一つしかない。


「あぁ、任せてくれ」


 こちらの即応にエリザは安堵の息を漏らし、微笑する。


「よろしくお頼みしますぞ、大賢者殿」


 ……と、ここまでは良かったのだが。


「当初は貴殿に守護してもらいつつ、仇討ちの様相を見せる、というのが狙いだった。しかし、ともすれば……自らの手で、仇を討てるやもしれん」

「えっと。それはつまり」

「左様。貴殿の御力で、あいつを強化していただきたい。そのためにも――」


 そして。

 エリザは自らの考えを包み隠すことなく、ストレートに言い放った。


「――貴殿の肉欲、その全てを、ぶちまけてくだされ」

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