冗談のつもりが本気で怒られた話

まる。

兄から教わったこと

私は大人になっても言わないようにしている言葉がある。それは3つ上の兄から教わったことで、ことあるごとに思い出す出来事。それは私と兄が小学生の頃の話。

昔、家族みんな車で遠出から帰っているときだった。後ろの座席に私と兄が座っていて、各々DSでゲームをしていた。しかしあたりが徐々に暗くなってきてゲームをするのを辞め、ポケモンバトルみたいなことをしていた。最初はじゃれあって遊んでいたが、徐々にエスカレートし喧嘩勃発。原因は確か相手に攻撃するときの叩いたりつついたりするのが痛くて私が怒った。男女で力の差がある上に、年上の兄が手加減せずちょこちょこやってくるのが本当にムカついた為、「バカ」とか「アホ」とかよくある悪口を言っていた。兄も負けじと悪口を言い続け、負けず嫌いの私は、とりあえず思いつく悪口を言っていたが、やはり兄には勝てない。そして「本当に臭いんだけど!」と言った途端、兄が黙った。私は心の中で「やっと終わった」とひと息つき落ち着こうと思ったら、本気のトーンで「臭いはダメだよ」と言われた。思いつく悪口言っただけなのに、何を気にしているんだと思い無視した。そしたら兄は話を続けた。「臭いは人が言われて1番傷つく言葉なんだ。だから喧嘩のときも臭いはダメ。それは僕でも。」なにを真面目に言っているんだと思っていたけど、ずっと隣で語っているためとりあえず話は聞いていた。別に事実と関係あること言った訳でもないのに変なの。小学生の私でもさすがに本当に頭の毛が薄い人にハゲなんて言わないよ。と思いながら真剣な眼差しで語る兄に「思いついた悪口言っただけだけど」と言うと少し安心したのか「そうか。いかなる時でも臭いはダメだから」と最後まで謎の圧に押されごめんと謝った日のことを、私は臭いって思うたびに思い出す。どんなに嫌な人にいじられたり、嫌なことをされても人に対して絶対に「臭い」と言わなかった今日まで本当によく兄の教えを守っていると思う。このことを兄は覚えているのだろうか。私だけずっと守っているんだろうなと思いながら、今日も「臭い」を言わずに過ごしている。

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冗談のつもりが本気で怒られた話 まる。 @tototo23

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