第10話 ミランダ視点

 活気のあるとある国。

夜になっても光は消えず、街中を照らし続けている。

 

 そんな街中で、ひときわ目立つ建物がある。

 建てられたばかりの超高層ビルで、選ばれた人間しか入れない。

 

そんなビルの最上階に、一人の女性がいた。

 

「……綺麗ね」

 

彼女は一面ガラス張りの景色を見ながら、そう呟いた。

窓の外には街の光が輝いていて、勝者のみ見ることが許される景色である。

 

彼女の言う通り、景色は綺麗なものである。

だが彼女の言葉にはまったく気持ちが込められていなかった。

 

「はぁ……」

 

女性は目を瞑り、ため息をつく。

誰でもするような所作だが、彼女がするとやけに艶めかしい。

 

薄く紅が塗られた麗しい唇が動くのは、見る男を魅了する。

 

「早く家に帰りたいわ……」

 

彼女は別に孤児院の外に出たくないのだ。ただこれが先生のためになるから外で活動しているのである。


 敬愛する先生に戻ってこいと言われたらすぐに孤児院に帰るだろう。

  

 面倒くさそうに、また興味なさそうに眼下の絶景を眺める美女。

そんな時に、備え付けられている固定電話に着信がある。

 

『ミランダ様、お客様がお見えになられています』

「客……?」

 

 怪訝な表情を浮かべる女性。この場所に自分がいることは、誰にも知られていないはずの秘密である。

 

 しかし受付の人間から送られてきた客の画像を見て、女性は顔が緩み、恋する乙女のような表情になる。


 それは先ほどまでの退屈そうな顔をまったく感じさせないものであった。

 

「その方は私の大切なお客様よ。通しなさい」

『わかりました』

 

 そう告げると女性はすぐに動き出す。今のバスローブ姿で彼に会うのは絶対にダメだ。

 

 彼にはちゃんとした姿で会いたい。

彼女は少し癖のある長く豊かな金髪を揺らしながら行動する。

 

バスローブを脱ぎ落すと、彼女のグラマラスな肢体がさらされる。

豊満な乳房。

 

括れた腰。

大きな曲線を描く臀部。

 

スラリと長い脚。

男を魅了するありとあらゆる要素を詰め込んだような、美しい身体である。


そんな身体に、真っ赤なドレスを纏っていく。


 そして扉が開くと優しい笑顔をした先生がいた。


 「久しぶり、先生」


 彼女も笑顔で応じて、先生を部屋に招き入れる。


 大切にとってあった高級なワインとちょっとした手作りの料理を出して2人でディナーを始めた。


 彼は私の仕事を心配するようなことを言ってくれた。


 自分のことを先生が心配してくれてることに喜んでいると、


 急に部屋がぐらりと揺れる。それは地震であった。

 

 タワマンの最上階である部屋は大きく揺れたのだが、ミランダはまったく微動だにすることはなかった。

 

 彼女の強靭な体幹は、この程度ではまったく揺らがない。

そしてそれは先生も同じだった。

 

 彼は地震に全く動揺してなく、身体はまったく揺れていない。

 

 「地震なんて珍しいわね」

 

 目を丸くしていると、院長が物申す。

どうやら先ほどの揺れでグラスの中のワインがはねて、彼女のドレスにかかったようだった。

 

「あら、本当……」


 揺れによって波打ったワインが飛び、赤いドレスの胸辺りに付着する。


 先生は素早くハンカチで拭いてくれる。自分のしたことに気づいたのか顔を真っ赤にして謝罪してくる。


 いつも大人の態度を崩さない彼が、顔を真っ赤にしているのが面白かった。

 

 そしてまた、猛烈に母性本能をくすぐられた。表面上は何でもないように取り繕っているが、豊満な胸をドキドキと内部が打ち付けてくる。彼の手が胸に近づいただけで、まるで生娘のように緊張してしまった。 


 「少し、外に散歩しに行かない?」


 先生が頷くと、ミランダは自然に彼の腕を取り、身体を押し付ける。

 

 美しく、誰をも魅了するような肢体が、彼の身体に当てる。ミランダは先生に触れられて幸せな気持ちになった。

 

 そうして二人は涼しげな外に、火照った体を冷ましに行った。

 

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