第6話 デッドクロス

女性と遊ぶにはお金がかかる。最初は会社の報奨制度を使って現金入手していたが、僕が頑張り過ぎたせいで税務署に指摘を受けたらしく途中から給与振り込みになった。これでは嫁を誤魔化せない。困った僕は横領をはじめた。数年間、割と見つからないもんだと思った。不思議と、見つからないようにやめておこう、ではなく見つかったらこうしようという発想がいつもあったように思う。いつか誰かに言われたが、ほんとに僕はヒトの心を持ち合わせていないのかもしれない。

当然いつかはバレる。借金をし可能な限りの返済をした。そして嫁の僕を蔑む目、どうやらこれも遺伝子に組み込まれているようだと義母邸に謝罪に行ったときに理解して帰ってきた。

そう言えばあの旦那も似たような顔してたっけ?そうすると人間のDNAにすり込まれているというのが正しいのか。まあそれはそれとして、嫁とは離婚はしていないものの当然家庭内別居。

家族と呼ばれる存在から見放されるのは最初は案外快適にも思えた。無駄な人付き合いが無くなるのは良い。が、やはり時間とともに恐ろしいほどの寂しさと、何か狭いところ、例えば棺にでも閉じ込められて身動きできないような感覚が襲ってくるようになった。

あ、でもその反面、コロナ禍少し前、僕がギターはじめた時に嫁と義母共に僕の予想と違って「なんで?」って言ってたっけ。僕にはそのなんでの意味がいまだに分らない。オッサンはカッコいい、楽しいなと思うことをしたらダメなのかな。この人たちとは理解しあえることは無いなと思った。

しかし、、、

僕はいつか許されるのだろうか?それにはどうすればいいんだろうか?そもそもその考えが甘いんだろうな。

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