第2話 所謂、普通の15歳
朝の教室、なぜか昨日のゲームセンターでの出来事が噂になっていた。
「瑞希、男子高校生3人相手に喧嘩したって本当?」朝から美咲に詰め寄られる。
「ヒトチガイダトオモウヨ」ここは知らないふりをするのが賢明だ。
「ふ~~ん、こんな動画もあるんだけど」スマホの画面を見せてきた。
「私に似てるね。ユウチュウブに出てるんだこの人、同じ高校じゃん誰だろ」と、とことんしらばっくれることにした私はあくまで第三者目線で話す。
「こんな整った顔、瑞希しかいないでしょ。しかもこの動画めちゃくちゃ再生回数伸びてるんだよ。コメント欄も半端ないし、もう瑞希は有名人だよ」
コメント欄を見たら“美脚だの、蹴られたいだの、美人過ぎるだの、守られてる男子うらやましいだの”書いてあった。
幸い、見物料もらってるシーンは無かったが“この美脚見れるんならお金払ってもいい”ってコメントを見て正当な対価と受け取ることにした。
そんな騒々しい朝から始まった一日は、噂のせいか授業間休憩の度に見物に来る学生で教室に落ち着ける場所はなかった。
せめて、昼休みは落ち着きたかったのでお弁当を持って生徒指導室に行くことにした。
生徒に一番不人気な生徒指導室は誰も来ないだろうとよんでたんだが、こっそり入室すると、なぜか生徒指導の先生がいた。
「おっ、橿原か。丁度、お前呼ぼうと思ってたとこだ。よくわかったな」(何で居んだよ)
「いえ、なんか予感がしたんで」と第六感鋭いみたいな理由をつけた。
「早速なんだが橿原の噂話聞いてるよな?実際の話どうなんだ?」(直球かよ)
「動画も出回ってるようですし、否定はしませんよ。
「映像証拠もある事だし、橿原に非は無いことは事実だがゲームセンターに学校帰りに寄ったことは咎めなきゃならんのでな。男子学生を庇ったことには、先生的には褒めてやりたいとこだが学校側からしたら要注意だ。以後、気を付けるように」
「はい、反省してます」とりあえずこれで話は終わりかと思ってたら
「橿原、なんで弁当持ってんだ?」今更、そこ聞くかな。
「いえ、ここでお昼御飯を食べようと思ったんで」と正直に話した。
「おおそうか、それなら、お茶入れてやる」と言って先生が嬉しそうに給湯室に消えた。
暫くして、自分の弁当とお茶の入った湯呑を2つお盆に載せて戻って来た。
何で先生と一緒にお昼ご飯を食べなきゃいけないんだと思ったが、なんか先生楽しそうだな。
「うちも橿原と一緒の高校1年の娘がいてな、俺の言うことなんか全然聞かないんだ。どこの家も同じようなもんだろうけど、小さいときは、お父さんお父さんって寄ってきてたのに、今の素っ気ない態度が寂しくてな」と本気で寂しそうに言うので
「同じ高1の女子としては、父親とはいえ男の人に対する当たり前の態度だと思いますよ。私が先生の娘なら、そうですね…、まずは挨拶からかな。普段の挨拶をマメにして、話しやすい環境を作るのがいいと思います。後、恋愛の話は禁句ですね。娘の恋愛事情に興味があるような態度を示したら間違いなく引かれます。打ち解けてきたら、高校の先生って立場を利用して、うちの生徒が…的な言い回しで、娘さんの意見も聞かせてくれ的な聞き方がいいと思います」と真面目に答えた。
(私が指導してどうする、立場が逆なのだが)
「橿原、ありがとな。ちょっと、家で実践してみるわ。また、生徒指導室に遊びに来いよ」見た目怖いイメージの強い先生だが話してみると案外そんなことはなかった。
そろそろ昼休みも終わりなので教室に戻ろう。
先生に礼を言って教室に戻った。
教室では誰かが、私が生徒指導室に入るのを見ていたのか先生に昼休み中怒られていたことになっていた。
「瑞希、大丈夫⁈生徒指導の大竹先生にみっちりしぼられたんでしょ。お昼食べてないんじゃない」と美咲が心配そうに話しかけてきた。
実際は注意だけだったし、先生と一緒にお昼ご飯を食べただけだが、大竹先生って言うのか、名前聞いてなかったなと改めて思った。
昼からの授業は結構退屈だったが、また授業間に騒がしくなるのかと構えていたが午前中の騒がしさより、かなりマシになった。
(人の噂も七十五日っていうからな、ってまだ1日目か)
放課後、校門のところに他校の生徒が来てる。橿原を探してるんじゃないかと言われたが気にせず今日も美咲と一緒に帰ることにした。
校門のところで昨日の女子生徒二人とおっさん高校生ではなくイケメンの男子高校生が居た。
制服は同じ感じなので同じ高校なのだろうけど無視して通り過ぎようとしたら女子生徒に呼び止められ、いきなり謝られた。
「「昨日は、すみませんでした」」二人息を合わせたかのように謝ってくるものだから無視もできず、立ち止まってしまった。
一緒に居たイケメン君が私と美咲の顔を見て女子生徒に「この子がそうなのかい」と聞いていた。
「ええ、こちらの方が金蹴りで三人を倒した人です」と私の方を指して、小さな声でイケメン君に言った。
(仕返しってこともなさそうだし、親玉が謝りに来たってとこか)
「申し遅れた。僕は、山上実業高等学校の生徒会長の
「生徒会長さんがわざわざ出向くんですね。それだけ生徒を大事にしてるとか?私は許すとか許さないとかを問題にしてるわけじゃないです。男子生徒からお金を巻き上げようとしてたから庇っただけで、そしたら、私も拉致しようとしただけで(と、ここで嘘泣きを入れる)………思い出したら、恐怖でこんなことなら、警察に突き出せばよかったと反省してました…(と更に泣きまね)」
軽く謝罪すれば許されると思っていたのか生徒会長は狼狽えていた。
生徒会長をいじめてもしょうがないので暫く泣きまねをした後
「生徒会長さんの謝罪は解りました。でも、謝るのなら私ではなく、いじめられ恐喝されていた男子生徒に謝るべきだと思いますが。それに先ほど三人も連れてくるとおっしゃってましたが絶対連れてこないでください。あの人たちの謝罪など聞きたくないですから」ユウチュウブの動画配信の影響で私の存在が大きくなっているせいで、もともとの原因が小さくなっている。
方向性自体変わってしまってるなと感じた。
二人の女子生徒の方を見て更に「あなたたちは、いじめられていた男子高校生を知っているのでしょ、私に許されるのではなくて彼に許されなければならないんじゃないんですか。今すぐ謝りに行ってきなさい。美咲さん帰りましょう」と言って最後に髪の毛をはらりとなびかせ、颯爽とその場を後にした。(決まった)
「瑞希、生徒会長さん瑞希の説教の後、顔を真っ赤にしてたけど、それに、さっきの子たちが昨日の恐喝の共犯者?」しばらく歩いたところで美咲が声を掛けてきた。
「そうだよ、あの子たちの一人、茶髪の子は男子と友達っぽかったけどもう一人は違う感じ」そう言うと美咲は考えるようなそぶりをして
「茶髪じゃない方の子って同じマンションに住んでると思う。何度か見掛けたことあるわ」と言ってきた。(世間は狭いな)
駅前のタワーマンションの前で美咲と別れ駅前の商店街を自宅に向けて歩いている途中、昨日のゲームセンターって、前回、高校入学した時は知らなかったとしても、駅の近くだし裏通りとはいえ目立つとこなのにゲームセンターがあった記憶がない。
何かあったような気がすると考えていたらラーメン屋が見えた。
思い出した。
確か高校1年の夏頃にはラーメン横丁とか言うラーメン屋の屋台村みたいな店が入ってたな。
昨日はまだ新しそうだったのにそんなにすぐ店が変わるかな?
何かあって変わらなければならない状態になったんだろうな。
じゃあ高1の春くらいの事件、高1の春と言えば他校の女子生徒が入学早々に暴行された事件があったな。
入学式の後の話なのでそんなことあったってのは思い出した。
でも昨日の事件にそんなものはない。
ひょっとしてだが昨日のゲームセンターがその現場になったんじゃないのか。
犯人はおっさん高校生?暴行された女子高生ってさっきの2人?
いやいや、考えすぎだろ。
夜、ベッドで横になっていたら美咲からメッセージが入った。
『瑞希の“金蹴り動画”で気になったんだけど瑞希と男3人と被害者と茶髪の女子の6人しか映ってないんだよね』
『金蹴り動画って何?』
『えっ、金蹴り動画でヒットするよ、いまだに再生回数のびてるもの』
『そんな詰まんない物でバズってんの?みんな暇なんじゃない』
『バズってって何?』(まだバズるとか言わないんだ普通に使ってたから気を付けないとな)
『え~と、IT用語⁉』
『ITって何?』えっ、て困っていたら『うそうそ、それくらいは解るよIT革命とかいうし』とメッセージが来た。
(難しいな、普通に使ってる言葉も10年前だと通用しないなんて美咲みたいに仲良かったら敬語って訳にもいかないしな)と思考をしてしまった。
『本題に戻るね、あの動画を撮ったのって、もう一人の女の子なんじゃないかなと思って』美咲の言葉になるほどと納得する。
『確かにそうだね、私たち以外に、あの周りには居なかったし、撮影位置からして、もう一人の女の子っぽい』
『でも、何が目的だったんだろう?最初から恐喝の現場を抑えることかな?』美咲の疑問にそうだとしたらもっと深い理由がありそうだと思った。
前の高校時代の事件が昨日の恐喝につながるとして、動画を撮っていたことがばれておっさん高校生たちが女子高生に乱暴した。
俺が介入したことで動画の撮影はばれなかったって事か。
『あの子にもう一度会う必要がありそうだね』こうして迷探偵瑞希&美咲の夜の作戦会議は進行するのだった。
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