第27話 大人のあなたに援助したい
大院君に能力を見込まれたわけですが、しかしそうなるのには半端ではない修練を積まねばなりませんでした。若いころは禅を学び、豊後では五岳師という易経の大家のもとで歳月を尽くして易を極めました。その後は支那やインド、アメリカに渡りそれぞれの深山でひとり修業を積んだものです。それゆえ初対面であっても、人の相を見るだけでおおよそのところはわかりますし、おうかがいした生年月日、申年の3月25日生まれ(この時一葉23才)を演算してみてもすぐにわかることです」とみずからの略歴を披露しつつ説明をしてみせた。壮々たる略歴は広告文に載っていたので知ってはいたが支那・インド・アメリカでの深山修業云々のことは知らなかったし、何よりその陳述には「これすべて真実なり」の重みがあった。一葉は改めて目を丸くせざるを得なかった。自分などには悉皆想像もつかないような遍歴だったからだ。しかしそれならばなぜ自分のような取るに足りない、財産もない者に、頼みもしなかった算命占星などをしてくれたのだろう。おもはゆい次第でしかない「あなたの本来の力、星は、そんな卑小なものに存するのではない」などと言明し、持ち上げてもくれたのだろうか。一葉はそれを聞きたかった。しかし聞くまでもなく心中の問いが聞こえたかのごとく「ごもっともです。わたしはその人の財力の有る無しにかかわらず、世の中で大きなことを為すであろう人物に対しては、欲得をかえりみずに援助することを心がけているのです。それは自分の使命であるとも心得ています」と義孝は問わず語りをしてくれたのだった。『大きなことを為す?このわたしが…?』しかし一葉には合点が行かない。
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