私が双子と共犯関係になるまで

灯倉日鈴

第1話 真城杜兄弟

 琥珀崎高校一年一組。

 うちのクラスには校内でも有名な双子がいる。


「はぁ〜、今日も律希りつき君カッコいい〜〜〜!」


 昼休みの教室。喧騒の中、ヒソヒソと女子の黄色い声が飛び交う。

 話題の主は窓側の列の前から四番目の席に座った男子生徒、真城杜ましろもり律希君だ。


「イケメンってだけで眼福なのに、成績は学年トップだし、スポーツも万能。しかも家はお金持ち。完璧じゃない」


「人生何周目? ってくらい温和な人格者だしね。私、この前プリント運んでたら、たまたま通りかかった律希君が手伝ってくれたよ」


「えー、いいなぁ。彼女いないなら狙ってみようかな?」


「やめときなって。先週、二年の富田先輩がコクって玉砕したって」


「は? あの読モの先輩? メチャ可愛いじゃん。どうしてフラレたの?」


「『今は勉強に集中したいから』だって」


「うわー! 振り方までイケメンだわ!」


 キャーキャー盛り上がるクラスメイトを横目に、私は購買のパンをかじりながら真城杜律希君を見る。彼は噂の的になっているなんてつゆ知らず、数人の男子と談笑している。人当たりのいい彼は、男女問わず人気がある。

 そして――、


「でも、私は奏斗かなと君の方が断然好みだな」


 次に女子達が視線を向けた先は、律希君の一つ前の席。机に突っ伏し、豪快に足を投げ出して眠るお行儀の悪い男子生徒は律希君の弟、真城杜奏斗君だ。


「ちょっとヤンチャな感じがいいんだよね。成績も出席日数もギリギリだけど、双子だから律希君と同じで顔も家柄もバツグン!」


「でも、奏斗君はチャラすぎない? この前、他校の子と付き合って一週間で別れたって」


「あー、彼女になったら苦労しそう」


「あの二人って、顔は似てるけど性格は真逆だよね」


「間違いようがないわー」


 笑い合う彼女達を眺めながら、私は紙パックのいちご牛乳をストローで吸う。


 ……みんな、本当に気づいてないのかな?


 狭い教室の中、前後に並んだ席の真城杜兄弟。

 あの二人……時々、入れ替わってるんだけど……。

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