うまい会社のやすみ方
鷹橋
今日は平日
突然、海が夢に出てきた。
予兆などあるはずもなく、突然海の夢を見た。
僕の住んでいる町には、海なんてない。都道府県単位まで値を広げてみてもない。
青かった。ひたすらに。
砂浜は、なんというかサラサラと心地よい触り心地がしそう。
覚めた後には、カラカラという音が残っている。頭の中を駆け巡る。
——一人暮らしで疲れているのだろうか。
床に転がっているポカリスエットをひとつ拾い上げ、数滴残った雫を喉に入れる。
「変な味」
これで大丈夫。今日は休む。
いつものごとく、同じ駅に行く。いつもの電車に乗る。
隣の大きめの駅で降りて、乗り継ぐ。
朝早いが、人はそこそこに多い。
混雑していない車両を目指して、それが海へつながっているのかだけをアプリで確認する。
「よし」
声出し確認は基本。仕事のことは忘れられそうにはなさそうだ。それでもいい。
湘南の海へ向かう電車は、東京でほどほどに混みはしたが、横浜を抜けると座れる程度には空いていた。時間もちょうどいい。
JRの駅に降り立つ。
ここからは、わからない。来たことがないのだ。
「江ノ電乗ってみるか」
フリーパスを購入し、七里ヶ浜とやらを目指す。ひたむきに。
江ノ電には、さまざまな観光客がいた。通学・通勤で利用する人はいなさそう。寝坊したのか、寝癖のついた男子高校生が一人だけ乗っていた。
すぐに海が見える。潮の香りが鼻から抜ける。
江ノ島駅で降りるかどうか、迷ったが、あえて降りない。
ゆっくりとした江ノ電のペースに任せる。ガタンゴトンという音も、発着のメロディも楽しむ。
七里ヶ浜につく。
ひたすら海へ歩こうとはするが、道がわからずに他の観光客について行った。
目の前には大海原。遠くには何も見えない。水平線。
海への階段は、思いの外急で滑らないように注意を払った。ゆっくり着実に、靴を着地させる。
やっと辿り着いた砂浜は、夢のものより粗いのが踏み心地でわかった。
だが、徒労には程遠い。
明後日まで休むかな。
うまい会社のやすみ方 鷹橋 @whiterlycoris
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