第7話 才能の卵

 天井を突き破った土の拳は止まることなくゴブリン騎士を叩き潰した。


「ひぃぃ!?」


 風圧で吹き飛ばされそうなラヴィポッド。その肩をアロシカの手が支える。


「あ、ありがとう、ございます」


 振り向いて見上げると、


「こんくらいで礼なんかいらねえよ」


 アロシカは目を逸らす。


 その様子を見ていたハニの表情が一瞬曇った。しかしすぐに元の表情に戻る。今はそれどころじゃない。正面を見据え、何が起きたのか探るのが先決。


 小屋の約半分が勢いよく崩れたにもかかわらず、全壊しなかったのは奇跡に近いだろう。壁が消え、全貌を露にした土の巨人。放たれるプレッシャーに、ラヴィポッドを除いたものたちが息をのむ。


「あれって……ゴーレム、じゃないの? 失われた魔術のはず」


 ハニは土魔術の知識がある故に、誰よりも土の巨人に驚いていた。ゴーレム錬成の魔術はその方法こそ伝わっているものの誰にも再現すること能わず、失われた魔術とまで言われている。では目の前の巨人は何だというのか。


 狼狽えるハニの呟きに耳聡く反応した人物が。


「ゴーレム知ってるの!? あれわたしが錬成したんだよ、お家と引き換えに! なかなかうまくいかなかったんだけどね、ジョノムがくれた土で試してみたら……」


 ラヴィポッドだ。おどおどした様子はどこへやら。ハニの眼前にズズイと迫り、早口で捲し立てる。


 ハニは顔に掛かる唾に表情を引き攣らせ、一歩後退った。とても嫌そうだ。


「一目見てビビッときちゃったってわけ! 土の改良は頑張ってたんだけどこれじゃない感がずっとあって……」


 尚も距離を詰めてくるラヴィポッドの肩を抑え、少しでも離れようと顔を背ける。それでも止まる気配がないのを悟り、手を押し当てて口を塞いだ。


「ふぐふむふぶ……」


 手の中で口がもごもごと動き続けている。まだ喋り続ける気らしい。埒が明かない、とハニが強行手段に出る。


「わッ!」


「ひぃ!?」


 声を張り上げたハニ。


 ラヴィポッドは怯えて後方に飛び跳ね、体を丸めて震え始めた。


 ハニがすかさず服を摘まみ上げて顔を拭く。チラリと覗いた腹部は痩せ細っており、肋骨が浮き出ている。餓死とまではいかずとも免疫力の低下によって病気を患うなど、体調を崩すのは時間の問題に見えた。


 怯えるラヴィポッドに若干の罪悪感を抱きつつ、ラヴィポッドの言葉を整理する。


「あのゴーレムを、君が錬成したっていうのは本当?」


「はい! わたし、の……はぃ」


 ゴーレムと聞いてテンションが最高潮に達し目を輝かせたラヴィポッドだが、先程の失敗を思い出し項垂れる。また調子に乗って怒られるところだった。


「ご、ごめんね。そんなに落ち込まないで。ちょっとびっくりしただけだから」


 これにはハニもたじたじ。少し屈んで目線を合わせて謝る。


「はぃ」


 ラヴィポッドは視線を逸らす。


「あーあ」


 困り顔を浮かべるハニを見て、アロシカが含み笑いしていた。


 キッとハニが睨むと素知らぬ顔で口笛を吹く。


「……はあ、仕方ないか。さっさと逃げるよ」


 ゴーレムの方を見れば、飛び掛かるゴブリンの剣が弾かれていた。宙で無防備になったゴブリンへ、ゴーレムの握り拳が槌のように叩きつけられる。地上に急直下したゴブリンが物言わぬ肉塊となり、ゴブリンが攻撃を仕掛ける度、似たような光景が繰り広げられた。


 ハニは隙を窺ってゴブリンに気取られぬようそろりと動き、転がっていた剣を拾う。潰されたゴブリンが佩いていた剣。ちょうど近くに転がってくれたのは幸運だった。


 剣を隠しながらアロシカに歩み寄り、


「はい、これ」


 と手渡す。


「んあ? さんきゅ。これで正面の奴ら倒すってことでいいのか?」


「剣なんて持ったことないんだからあいつには勝てないと思う。ちょうど穴も開いてるし裏から抜け出そうよ」


 アロシカへ斬りかかった隊長格のゴブリン騎士と戦うのは避けたい。ハニはアロシカが壁に激突してできた穴から脱出しようと考えているらしい。


「あ、あの……穴のすぐ近くにゴブリンいましたよ」


 ラヴィポッドが遠慮がちに告げる。


「今は殆ど正面に行ってると思う。一人二人残ってたらそれは倒すしかないかな」


「おっけ」


「が、頑張ってください」


 剣の感触を確かめ気を引き締めるアロシカと、対処を丸投げして応援するラヴィポッド。


 ハニは後者の反応にきょとんとする。


「えーと、すごい土魔術師なんじゃないの? ゴーレム錬成を成功させちゃうくらい」


「ふへへ」


 褒められて照れるラヴィポッドから少し気味の悪い笑いが漏れる。


「じゃあ君も頑張ろうよ……」


「えぇ!?」


 自分も戦うとは思っていなかったのか、驚く声には抗議の色が含まれていた。


「で、でもゴブリンと戦ったこととかないですし……」


「挑戦するいい機会だね」


「……」


 ラヴィポッドがあんぐりと口を開けたまま絶句する。恐ろしいことを強要するハニの顔がゴブリンに見えてきた。


「先行くぞ」


 うだうだ言っている間にアロシカが壁を蹴破り、穴を広げながら出ていく。


 すると穴のすぐ側、小屋の内側からは死角にあたる位置取りにゴブリン騎士が二人控えていた。


「うお!?」


 挟み込んで捕らえようとするゴブリン騎士。


 不意を打たれたアロシカは前方に飛び込んで逃れ、転がって受け身をとりつつ振り返る。


「随分と生きの良いネズミだな」


 ゴブリン騎士が一歩近づき、見下す。


「てめぇは猫のつもりか? 鳴いてみろよ、ニャーって……似合わねえか」 


 アロシカが鼻で笑い、低い姿勢で駆け出す。


 一方、小屋の中ではハニが、アロシカと対峙するゴブリン騎士の背に向けて人差し指を伸ばしていた。もう片方の手を手首に添え、ブレないよう狙いを定めてマナを制御する。重力がなくなったように足元から少量の土が浮き上がると、指先のあたりでマナと混ざり合い、土の弾丸が形成されていく。


「え?」


 ハニの魔術を見たラヴィポッドが思わず疑問の声を上げる。その魔術が、母から教えて貰った狩りのための魔術と酷似していたから。


 土の弾丸の底部にマナが込められていく。圧縮されたマナを用いた火魔術で小規模な爆発を起こし、それを推進力に高速で回転する弾丸が放たれた。


 アロシカが駆け出したのはほぼ同時。


「気づかないとでも……」


 控えていたゴブリン騎士が立ちはだかり、アロシカと対峙するゴブリン騎士の背を庇った。盾で弾丸を受け、速やかに術者を始末する。未成熟な人族の小娘の魔術など脅威ではないと高を括っていた。


 だが土の弾丸は盾を、鎧を貫く。


「がはっ」


 更には立ちはだかったゴブリン騎士すら貫いて、アロシカと対峙するゴブリン騎士をも撃ち抜いた。


「ぐっ」


 呻く二人のゴブリン騎士。


 弾丸が、アロシカの頬を掠める。間髪を入れずに斬り上げ、ゴブリン騎士の鎧のない部位を狙う。


 ゴブリン騎士は、懐に飛び込んだアロシカに剣を突き出して応戦する。


 その剣筋を見て、アロシカがニヤっと口角を上げた。


「貴様っ……!?」


 ゴブリン騎士が誘われたと気づいた時には遅かった。腹部を撃ち抜かれ、痛みで踏み込みが甘くなっていたゴブリン騎士。無理矢理に突き出した剣筋は精彩を欠いている。


 軌道を変えたアロシカの剣が、ゴブリン騎士の剣の腹を叩く。


 衝撃に流されて姿勢を崩したゴブリン騎士。その首を、アロシカの返す剣が刎ねた。


「この……!」


 振り向いて剣を振るおうとしたもう一人のゴブリン騎士。その足が、土の弾丸に撃ち抜かれる。


「……ガキ共がっ!」


 片膝をついたゴブリン騎士の怨嗟の声。憤怒を宿した瞳に、飛び上がったアロシカが映る。


「喧嘩売ってきたのは」


 アロシカが剣を逆手に持ち替える。


「てめぇらだろうが!」


 体重を乗せた突きが、ゴブリン騎士の顔面に突き刺さった。顔の部分までは覆っていない兜。その内側を剣が押して、着地するアロシカと同時にゴブリン騎士が倒れる。


 剣を引き抜くアロシカ。最初に殺めた際の迷いを断ち切り、敵を仕留めることへの躊躇がなくなっていた。


「おい、魔術当たりそうだったじゃねえか!」


 息を吐いて気を緩めると、戦いの最中を思い出してハニに詰め寄る。


「でも当たんなかったでしょ?」


「……確かに」


 たった一言で納得する。もう少し食い下がっても良さそうだが。


「脱出するぞ、お前ら!」


 アロシカに声をかけられた子どもたちがソワソワと小屋から出てくる。全員出てきたのを確認して歩き出す。さっさとここを離れたい。だがハニが立ち止まっていることに気づいて振り返る。


「どした?」


 こんな時にぐずぐず立ち止まるのはハニらしくない。そう思い声をかける。


「私、助けに行く」


 決意を込めて宣言するハニ。


 アロシカは村の大人たちのことだとすぐに理解する。


「俺も行く」


「私たちがどっちも行くわけにはいかないよ。みんなが困っちゃうから」


「ならハニがこいつら連れて逃げろ」


「アロシカは頭使うの苦手でしょ。私が行ったほうがいいよ。様子を見て無理そうなら一旦逃げて、また改めて助けに行くし」


 心配させないようハニが笑う。


 アロシカは不機嫌そうに顔を逸らした。何を言っても無駄だと悟ったから。


「……捕まんなよ」


「当たり前じゃん」


 そうして子どもたちを引き連れてアロシカは動き出す。


 集団の最後尾をびくびくついていこうとしていたラヴィポッド。その首根っこが掴まれた。嫌な予感を感じてギギギと壊れかけのおもちゃのように振り返る。


「君も来て」


 ハニの爽やかな笑顔。しかしラヴィポッドには恐怖を齎すゴブリンにしか見えない。


「あ、あんなに怖いのに、ですか?」


 ゴブリンの顔を思い出す。野蛮さ、残忍さが滲み出た醜悪な顔つき。深い皺の寄った恐ろしい表情。危うくちびりそうだった。


「どんなに怖くてもよ」


 離せば逃げ出すのが目に見えているため、ハニはラヴィポッドを摘み上げたまま話し出す。


「名前、なんていうの?」


「ラヴィポッドです……」


「可愛い名前ね。私はハニ。実はまだ捕まってる人たちがいて、助けるためにはラヴィポッドちゃんの力が必要なの」


「じゃ、じゃあ諦めるしか……」


「助けよう、って発想はないんだ」


 どこまでも弱腰なラヴィポッドに、ハニが苦笑する。


「あのゴーレムってどれくらい強いの?」


 ハニが問う。


 答え如何では諦めてくれるかもしれない。そう思ったラヴィポッドは光明を得たり、とスラスラ語り出す。


「実は! 見た目は強そうだけどほんとは弱いんです!」


「嘘はだめ」


「……戦わせたことないのでわかんないです」


 撃沈。ラヴィポッドの浅知恵は即座に見破られる。大げさな身振り手振りも意味を為さなかった。普段と違う態度が却って怪しさを演出してしまっているとは気づかない。


「……そっか」


 ハニはまた嘘かもと初めは訝っていたが、一旦納得する。


「強いならゴブリンたちを一網打尽にしたかったけど……どうしよっかな」


「ゴブリ……ハニさんがさっきの魔術で全部倒しちゃえばいいのでは?」


 盾で防がれても致命傷を与えられるなら、ハニの力だけでもゴブリンを一掃できそうなものだ。


「今聞き捨てならない言い間違えが聞こえたけど」


「き、気のせいですよ。疲れてるんじゃないんですか? 帰った方がいいかも……」


 嘘を重ねて誤魔化し、撤退する方向へ話を曲げるのも忘れない。


「あの魔術はマナをたくさん使うから何発も撃てないの」


「え、そうなんですか?」


 撤退案はサラッと無視される。だが気にした様子はなく、ハニの言葉に目を丸くした。


「今の私じゃ五発も撃てば限界」


「ご、五発で?」


「うん。何年か前、村に来た魔術師のお姉さんから教わったんだけど、その人はマナが桁外れに多かったからマナ効率とか考えてないんだと思う」


 ハニは当時を思い返していた。常識に疎く、少々ドジな凄腕魔術師のことを。彼女が村に滞在したのは一か月ほど。それさえハニが駄々を捏ねて期間を伸ばしてもらったのだ。その一か月で、元々才のあったハニは魔術師としてのレベルを飛躍的に高めた。


「へ、へー……」


 話を聞いているのかいないのか。適当な相槌を打つラヴィポッド。


 尊敬する女性を語るハニだったが、何かに気づいたのかラヴィポッドを正面に運び、まじまじと見つめる。


 ラヴィポッドは不思議に思い、とりあえず精一杯のキメ顔を披露しておく。両手を握って顎に当て、目をパチパチと見開く。自身の思う一番可愛い顔だ。


 ハニは特に反応を示さず、ラヴィポッドを見つめ続けた。その顔と、尊敬する女性の顔が重なる。師匠は長身で、女性特有の曲線がダイナミックに強調された体つきなため体形は似ていないが。


「……似てる」


 そしてぽつり、と呟いた。


「ご、ゴブリンにですか?」


「どうしてそうなるの……私に魔術を教えてくれたお姉さんによ」 


 ラヴィポッドはその言葉で漸く一つの可能性に思い至った。


 何年か前に現れたラヴィポッドと似てる魔術師。そしてハニが行使した見覚えのある土の弾丸の魔術。


「お母さん、かも……」


「お姉さんじゃなくて?」


 年齢を訪ねたことはなかったが、ハニの記憶の中の銀髪魔術師は若々しく、十代後半くらいだと思っていた。ラヴィポッドほどの年齢の子どもがいるようには見えない。


「な、名前はなんて言ってましたか?」


 何も手掛かりのなかったところから、早くも母の痕跡が見つかったかもしれない。そう思うとつい気が逸ってしまう。


「マフェッド」


 ハニから告げられた魔術師の名。それはラヴィポッドの母と同じ名だった。


「お母さんだ! どこに行ったかわかりますか!?」


 今までにない必死さで尋ねるラヴィポッド。


「たしかおう……」


 ハニは答えようとしたが口を噤む。期待の眼差しを向けるラヴィポッドを見て、ニヤリと悪い笑顔を浮かべる。


「救出を手伝ってくれたら、教えてあげる」


 するとラヴィポッドは胡散臭いものでも見るような目を向けると、渋々ポケットから石板を取り出し、


「ゴブリンたちを倒して」


 クレイゴーレムに命じる。


 ラヴィポッドの周囲に脅威がなくなり迎撃だけ行っていたクレイゴーレム。それが主の命を得て苛烈に攻め始めた。


 足元にいたゴブリンを踏み潰し、撤退し始めたゴブリンを掴んで投げる。鉄の鎧を着こんだ同じ体重の生物をぶつけられ、ゴブリンがボーリングのように吹き飛んだ。


「つ、強いじゃん……」


「でしょ!」


 少し離れたところから見ていたハニはクレイゴーレムの奮闘っぷりに唖然とし、横で誇らしげに胸を張るラヴィポッドには半眼を向ける。ゴーレムが弱いなどと先程ついた嘘をもう忘れているらしい。


 何人かは取り逃したようだが、粗方片づけたクレイゴーレム。


「は、早く終わらせないと……」


 二人はその肩に乗って追撃を仕掛けるべく進む。恐怖の時間を少しでも減らすため、可及的速やかに救出しなければ。


 ゴブリンの居住区に近づくと老人や女子どもなどの非戦闘員が慌てて逃げ支度をし、騎士が避難誘導している。


「ラヴィポッドちゃん、あの騎士を捕まえて! 捕まってる人たちの居場所聞き出すから」


「わ、わかりました!」


 しかしそれを実行に移す前に、一人の大柄なゴブリンが立ちはだかった。筋骨隆々でマントを靡かせるゴブリンが腕を組み、堂々と仁王立ちしている。


「我は全ゴブリンを統べる王になるもの、名をゴウワン! 巨人が相手ならこの拳、存分に振るわせてもらうぞ!」


「へ、変なのいますぅ!」


「突破して!」


「はぃ! やっつけて!」


 高らかに名乗りを上げたゴウワンに、ラヴィポッドの指示のもと疾走するクレイゴーレムの容赦ない拳が迫る。


「ふんぬあぁぁぁ!」


 独特の雄叫びで気合を入れ、ゴウワンの大振りの拳が迎え撃った。重い力と力のぶつかり合い。衝撃が吹き荒れ、木々が凪ぎ倒されていく。


「うわっ!」


「きゃっ!」


 肩から振り落とされるラヴィポッドとハニ。ハニがラヴィポッドの手を取り、抱き寄せて着地した。


「……なんなのあの筋肉ゴブリン」


 ゴウワン、ゴーレムともに無傷。フハハッと高笑いするゴウワンに、ハニは忌々し気な視線を送る。


(ゴーレムがあいつを引き付けているうちに動くべき? それとも倒すのを待って……)


 ラヴィポッドを下ろしどう動くべきか考えていたハニ。


 突如その腹部を衝撃が襲う。吹き飛ばされた先で木に激突し、うつ伏せに倒れた。


「ハニさん!?」


 ラヴィポッドが駆け寄り、立ち上がろうとしていたハニの体を支える。


「ありがと……」


 ハニの額には激痛から汗が浮かび、倒れた拍子に土で顔を汚してしまっていた。それでも心配させないよう笑顔を作る。


「こ、これ使ってください」


 ラヴィポッドがクッション用に仕込んでいたタオルを尻から取り出して手渡す。


「どこから出したー?」


 出所だけにハニは受け取るのをやや躊躇ったが、汚れたままも嫌なので額を拭く。幸い、臭ってはこなかった。


「動いてるゴーレムなんて初めて見たけどよ、あんなもんの相手はバカに任せて操ってる奴潰した方が早ぇよな」


 ローブを身に纏い、フードを目深に被った小柄なゴブリンが指でナイフを回転させながら二人に近づいた。隠されていて見えにくいが、人族の美的観点から評価しても整った顔立ちのイケメン少年ゴブリン。好戦的な笑みで八重歯を覗かせ、切れ長の双眸がラヴィポッドを値踏みする。


「ひぃ!?」


「次から次へと……」


 ハニは攻撃を仕掛けてきたであろう少年ゴブリンを睨み付け、思わず悪態を漏らした。

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